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コラム
生活歯髄療法で歯髄を残す
「歯の神経をとった」という話はよく聞きます。歯の中には神経や血管が通っている歯髄と呼ばれる箇所があります。「歯の神経をとった」とは、「抜髄」という処置によりこの歯髄全体を取り除いたことになります。歯髄を全て取り除いた歯の生存率は15年で50%といわれ、統計的には「抜髄した歯の2本に1本は15年以内になくなる」ことから、歯髄は可能な限り残すことが推奨されています。そこで、今回は近年確立された、歯髄を全て取り除くのではなく、感染部分だけを取り除いても十分治療効果が得られる、「Vital Pulp Therapy(生活歯髄療法)」の紹介をいたしましょう。
歯髄の重要性
歯髄とは、歯の内部(歯髄腔)にある疎線維性結合組織のことです。歯髄には、歯の中に栄養を送る血管や、虫歯の進行によって冷たいものや温かいものを感じるセンサーがあります。また、感覚だけでなく、修復象牙質を形成したり、虫歯の細菌に抵抗する免疫細胞などの防御機能があります。最近では歯髄バンクと呼ばれるほど、歯髄から再生療法が行われるという非常に大切な組織となっています。歯を失う原因
歯を失う大きな原因には、虫歯、歯周病、破折などがあります。それ以外に、虫歯のせいでこの歯髄を早期に抜髄処置したことで、術後、根尖病変を作ったり歯根破折を起こして、歯を失うということがあります。そこで、この部分を予防したり、抜髄処置を回避することで、将来的に歯の残る本数を増やすことが可能となってきます。生活歯髄療法について
生活歯髄療法は、神経に近い深い虫歯の治療において根管治療(抜髄治療)以外の選択肢となります。虫歯菌のせいで弱った神経の一部のみを取り除いて、歯の神経をなるべく保存する治療方法です。成功のカギは神経の健康度合い
深い虫歯の治療で、生活歯髄療法が成功するかどうかは、神経のダメージ度によります。神経のダメージ度が少ない場合は、感染源を取り除き、しっかり封鎖することで神経が自己治癒し、健康を取り戻せます。反対に神経のダメージ度が大きい場合は、原因を取り除いても生命力は回復できず、死んでしまい、生活歯髄療法は失敗となって、根管治療が必要となります。成功率は?
生活歯髄療法の成功率は、術式や歯の状態によってバラツキがあるので、30~90%とされています。専門医による抜髄治療の成功率は95%程度でバラツキはありませんが、治療成功のカギとなる神経の健康度を見極めるのは難しく、一般的にはより確実な抜髄治療が選択されることが多くなっています。生活歯髄療法の術式
間接覆髄 虫歯が神経に迫る深さで、虫歯を全てとると神経と繋がるような場合、治療による神経のダメージも大きくなります。このような場合には、あえて神経に近い部分の虫歯をとらず、露髄を防いで神経への刺激を極力避けます。これによって、周辺の虫歯のみを完全に取り去り、きっちりと封鎖することで、神経に近い部分に残った虫歯菌は活動を停止し、細菌の数も減ることが報告されています。健康な神経なら、弱い虫歯菌からの刺激で神経の内側から防御反応として第3象牙質(修復象牙質)ができるので、ラバーダムをかけて優しく治療し、その後の封鎖をきっちり行うことで成功へ導けます。 断髄法 深く浸食された虫歯では、神経が虫歯菌に感染して炎症を起こしています。歯髄が炎症を起こすことで、ズキズキと痛み出します。このような場合、通常の治療では神経を根の先まで取り除くことになります。しかし、この断髄法では虫歯と感染した歯髄の部分だけを取り除くことになります。そのあと、歯髄表面に薬を塗って、蓋をしておきます。3~6ヶ月すると薬の作用で歯髄から新しい象牙質ができてきます。それが確認できたら、薬を取り除きプラスチック、又は金属で最終的な詰め物をして完了となります。治療後に痛みが出るのは、歯髄をとった処が薬剤の刺激などで一時的に疼くためです。80~90%の確率で自然治癒しますが、もし治らなかったら、麻酔を行いながらもう少し歯髄をとって再度、断髄を行うことになります。 断髄法が適応されるケースとしては、・深い虫歯 ・ズキズキ痛む虫歯(冷たいものがしみる) ・歯髄の一部だけが死滅している が、挙げられます。また反対に適応されないケースとしては、・歯髄が全て死滅している ・継続して通院ができない 場合が挙げられます。 痛みや冷たさを感じなくなっている場合は、神経が死滅している可能性が高く、また、噛むと痛い場合などは神経が死滅した上で、根の先に膿が溜まっている可能性もあります。ここまでくると、最終段階の根管治療が選択されることになります。監修者情報
公開日:2023年07月10日
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