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コラム
入れ歯安定剤の選び方
入れ歯は顎の粘膜に唾液によって吸い付いています。しっかりと付いている間は安定剤の必要はありません。しかし、月日が経つと、顎の骨の量が減り、歯茎の形も変わってくるので、しだいに入れ歯と歯茎の間に隙間ができてしまいます。そうなると、安定剤の助けが必要となります。今回はそんな入れ歯安定剤についてのお話です。
義歯が安定する仕組み
唾液
部分義歯は残っている歯にバネで固定させる構造なので安定させることができますが、総義歯の場合、上下の顎に歯がないので、お口の中の粘膜に吸着力で安定させる必要があります。ここで重要なのが「水」、つまり、「お口の中の水=唾液」なのです。粘膜と床の間に唾液が介在することで、入れ歯を粘膜にピッタリ吸着させ、義歯安定に寄与するのです。辺縁封鎖性
例えばガラス窓に乾いた紙を貼り付けてもスルリと落ちますが、紙を水に濡らして貼り付けるとピッタリとくっつきます。これがお口の中での唾液の役割ですが、その窓に貼りついた紙を剥がす時に、真ん中から引っ張ってもなかなか剥がれるものではありません。通常、隅からつまんで窓と紙の間に隙間を作るようにします。義歯の場合も同じなので、この隅の剥がれ難さを辺縁封鎖性といって、義歯の安定性に重要な役割を果たすのです。義歯の床の素材
入れ歯の歯肉に模したピンク色の部分を床(しょう)といい、以下の種類があります。レジン床
レジンとは歯科用プラスチック樹脂(アクリルレジン)のことで、入れ歯のピンク色の部分がアクリルレジンでできたものがレジン床です。他の素材と比べて精度が少し劣りますが、最近はその欠点を克服した素材も出てきています。保険が適用されるので安価で治療ができ、適応範囲も広くなっています。ただ、強度を保つためにある程度の厚みと幅が必要となります。スルフォン床
高弾性・高強度のプラスチック(ポリカーボネート)を使ったのがスルフォン床義歯です。アクリルレジンは粉と液体を混ぜ合わせて作りますが、ポリカーボネートは専用の機械でプラスチックの粒を加熱、溶かして、入れ歯の型に流し込んで作ります。アクリルレジンに比べて熱に強く、吸水が少ないから臭いも付き難く、割れ難い入れ歯になります。ただ、他の素材とくっつかない性質なので、人工の入れ歯と化学的に結合せず、ピッタリはめ込むように人工歯を固定するので、アクリルレジンに比べて人工歯が取れ易くなっています。金属床
ピンク色の床の部分の多くが金属でできています。メリットとしては強度が強いので床の部分を薄く作れるので、違和感を和らげます。また、熱の伝導率が良いので、食べ物の温度を感じ易く、美味しく食事ができます。使われる金属の種類はコバルトクロム、チタン、白金が含まれた白金加金などがあります。特性としては、コバルトクロムは一般的によく使われコストパフォーマンスに優れ、チタンは軽くて硬く、白金加金は安定性が高く、加工した時のフィット感に優れています。入れ歯安定剤の必要性
入れ歯安定剤は入れ歯が飛び出さないようにするものと思っている方も多いようですが、入れ歯をお口の中で安定させ、装着感を高めることで、友人と談笑したり、好きな食べ物を思い切り食べたりなど、毎日の快適な日常生活に自信が持てるようになります。食べる時
入れ歯を使い始めた当初は、柔らかい物や小さく切ったもので馴らしていましたが、だんだん慣れてくると、好きなものを思い切り食べたくなるものです。入れ歯安定剤を使うことで、細かい食べカスが入れ歯と歯茎の間に挟まるのを防ぎ、食事がいっそう楽しいものになります。話す時
初めに入れ歯を装着した頃は、発音するのを難しく感じる言葉もあります。入れ歯安定剤は笑ったり話したりする時に入れ歯がズレるのを和らげてくれます。入れ歯安定剤を使うことで、人前でも自信が持て、親しい方とも近くで話せるようになります。入れ歯安定剤の選び方
何で選ぶか
味、香り
味や香りが強いものは食べ物の味を変えるので、食事が楽しくなくなることがあります。食べ物をしっかり味わいたい方は香料や着色料を含まない無添加処方の安定剤をおすすめします。スッキリした爽快感にはメントール配合のものがよいでしょう。色
安定剤の色には白やピンク、透明があります。入れ歯からはみ出した時に目立たず、ナチュラルに見せたいなら、ピンクや透明の入れ歯安定剤がおすすめです。道具の必要性
安定剤の中には使用時に道具が必要なものがあります。例えば、シートタイプを使用する時には粘着力を出すために水が、また型取りの為にはさみなどが必要なものもあります。外出先や忙しい時に使うには、道具を必要としないタイプの方が良いでしょうから、最低限の道具で簡単に使えるものを選ぶ方が良いでしょう。アルコールの有無
アルコールが配合されたもので、過敏症の方の中には歯茎に腫れや痛みなどが発生する可能性があります。アルコールの有無を確認して、アルコールフリー処方のものを選んでください。正しい使い方
長期間使用しない
入れ歯安定剤は応急的に使うのには便利ですが、長期間使い続けることは勧められません。長期間の使用は、咬み合わせがおかしくなったり、顎の骨が痩せてしまったりすることがあります。これらの状態の変化により、使っていた入れ歯を調整してもお口に合わなくなってしまいます。正しい噛み合わせに戻すまでにトレーニング期間が必要となり、新しく入れ歯を作るのにも時間が掛かってしまいます。就寝時は使用しない
就寝時は歯茎を休めるためにも、入れ歯を外すことをお勧めしていますが、着けたまま就寝される方もいるようです。その場合でも、入れ歯安定剤を付けたままで休むのは避けてください。時間と共に安定剤が溶け出し、喉の方に流れ込むと窒息の危険性があるので、就寝時には必ず安定剤を剥がしてください。使用できない入れ歯の確認
コンフォート床のようなシリコーン加工された入れ歯には使用できません。安定剤を剥がす際にシリコーンが剥がれたり、シリコーンにくっついて安定剤が取り切れないことがあります。入れ歯安定剤の使用を考える場合は、自身の入れ歯に使用できるかどうかを必ず確認してください。監修者情報
公開日:2023年07月10日
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