インプラントを可能にする骨移植・造成

歯をなくしたのに長い間放置しておいたり、合っていない入れ歯を長年使っていると、顎の骨がやせ細って、薄くなってしまいます。そこでインプラント治療を受けても、「あなたの顎の骨が薄くて、インプラント治療ができません」と、歯科医師からいわれたことはありませんか。今回はそのような方でも骨の量を増やす治療を行うことで、インプラント治療を可能にする方法をご紹介します。

骨移植・造成のメリット

インプラント手術は、顎の骨にドリルで穴を開けて、インプラント体を埋め込むものです。しかし、その骨の量が足りないと、インプラント体を埋め込むことができません。そこで、骨移植や骨造成を行って足りない骨を補うことで、インプラント治療が可能になるのです。

骨移植・造成のデメリット

追加費用がかかる

インプラントの手術費用に加えて、骨移植・骨造成の治療を行うと、追加手術費用として55,000円かかります。インプラント治療としては、346,500円/1本となっており、さらに骨移植・骨造成費用が加わって大きな出費となります。

治療期間が長くなる

骨移植・骨造成の治療を行うと、治療期間が大変長くなります。追加として６～12ヶ月ほどの期間が必要となります。インプラント治療には4ヶ月ほどかかるので、合計1年ほどの期間となります。治療や通院に長期間、時間を確保するため、生活や仕事の状況に合わせて治療を検討する必要があります。

インプラント治療を可能にする方法

GBRー骨移植

GBR（骨移植）は、インプラントを埋入する（骨に入れる）部位の骨の高さや幅が不足していて、インプラント体の一部が骨から露出して、しっかり固定できない場合に、骨を足して増やす方法です。

治療の流れ

露出したインプラント体の表層に自家骨（患者自身の骨）を移植して、メンプレンという生体素材でできた人工膜で覆います。６～9ヶ月で補填された移植骨が周囲の骨と結合して、インプラントと顎の骨が咬合に耐えられるほどに、しっかりと結合されます。尚、GBRには人工の骨補填剤を使う場合、自家骨と骨補填剤を混ぜた場合、メンプレンのみで骨の再生を促す場合の３通りがあります。

ソケットリフト

上顎臼歯（奥歯）部にインプラントを埋入する際に、上顎洞という鼻の空洞の底の部分との間に十分な骨がない場合に、インプラント体の先端が骨から突出すると感染の原因となるため、インプラントの埋入と同時にソケットリフトを行います。

治療の流れ

インプラントを埋入するための穴を上顎の骨に開け、そこに自家骨を挿入（※人工の骨補填剤を使用する場合、自家骨と骨補填剤の混合を使用する場合もあります。）し、上顎洞の底部にあるシュナイダー膜を押し上げて骨を追加し、インプラントを埋入します。インプラントは、６～9ヶ月かけて先端までしっかり骨に覆われて、上顎の骨と十分に結合されます。

サイナスリフト

サイナスリフトは、上顎臼歯（奥歯）部にインプラントを埋入した場合、上顎洞内にインプラント体がほとんど突出してしまうほど上顎の骨が著しく薄い場合に行われる治療法です。

治療の流れ

口内から上顎の骨の頬側の歯肉を切開し、上顎洞底部の骨に穴を開けて上顎洞粘膜を押し上げ、自家骨（または骨補填剤）を挿入することで、9～12ヶ月後に上顎の骨が骨造成されます。※同時にPRP法を併用する場合もあります。 尚、ソケットリフトが適応する骨の状態は、インプラント埋入部分の上顎の歯を支える骨の頂点から上顎洞の底部までの骨の厚みが6㎜以下の場合で、5㎜以上の場合には、インプラントの埋入をサイナスリフトと同時に行う可能性があります。 ※PRP法（Platelet Rich Plasma：多血小板血漿）ー骨移植を行う際、血小板から血漿を分離させたPRPを移植骨と併用することで、骨造成の活性化が促され、自家骨による再生促進が行われると、成長因子の研究で明らかになっています。

ボーングラフト

ボーングラフトは、自分の骨をブロックとして切り取り、骨が足りない部位へ移植して骨を造る治療法です。

治療の流れ

移植した骨ブロックを動かないようスクリューで固定し、４～6ヶ月すれば歯槽骨と同化します。同化したら、スクリューを取り出して、インプラント体を埋入します。 いかがでしたか、このように顎の骨が足りなくてもインプラント手術を受けられる可能性があります。骨移植・骨造成について詳しく知りたい方は、専門の歯科医院にご相談ください。