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コラム
歯周病を防いで長生き
年齢を重ねてから出てくる病気の多くは、口の中の衛生状態と深く関係しています。今からでも遅くない、口腔ケアの仕方を紹介しましょう。
重症化へのリスク
歯周病を放置しておくと、歯がぐらついてきて、遂には抜けてしまうこともあります。しかし、問題はそれだけでは済まないことにあります。日本歯科医師会では海外の研究論文などを基にして、早産になるリスクが7倍、心筋梗塞になるリスクが2.8倍、すい臓がんになるリスクが1.6倍になると、発表しています。 また、糖尿病患者に歯周病治療を施すと、糖尿病治療で服用する薬の量が1錠減るという結果が出ています。新型コロナウイルスにおいても、歯周病患者が感染すると重症化し易く、死亡するリスクが約9倍も高まるという論文が発表されているほどです。その他にも、アルツハイマー型認知症や腎臓病、脳卒中、動脈硬化、誤嚥性肺炎、関節リウマチ、骨粗しょう症などとの関係も指摘されています。多くの病気との関係
それではなぜ、歯周病はそれほど多くの病気に関わってくるのでしょうか。それは、歯周病のせいでできた歯茎の傷口から四六時中、様々な細菌が血管の中に入り込み、血流に乗って全身を駆け巡るからです。例えば、体や手足に傷ができれば誰でも、傷口を消毒するなどの細菌感染対策を行いますが、口の中はノーガードの無防備なままなのです。 また、高血圧や糖尿病では、血管に慢性的な炎症が起きているので、血液中の生理活性物質の「サイトカイン」が増えて悪化します。歯周病で炎症を起こした歯茎から放出されるサイトカインが全身のあちこちで炎症を悪化させることになります。歯周病菌について
代表となるジンジバリス菌
個人差はありますが、口の中には最大で約700種類の細菌がいるとされます。その中でも歯周病菌の代表といわれる「ジンジバリス菌」は、強力な酵素でタンパク質を溶かし、歯茎の細胞に穴を開けて侵入し、免疫抗体までも分解してしまいます。ジンジバリス菌が増えると、歯茎は徐々にボロボロになっていきます。歯茎がぷっくりと腫れたり、歯を磨くといつも血が出たりする時は、歯を支えている顎の骨が溶けてきている可能性がありますから、早く歯科医院で治療を受ける必要があります。思春期から増える歯周病菌
歯周病菌の多くは思春期の頃から増えていき、一度住みつくと完全に駆除することはできません。ですから、丁寧に掃除をして細菌全体の量を減らすことだけが、唯一の方法となっています。虫歯菌と歯周病菌の違い
虫歯菌は甘いものを食べると増え、空気がある場所を好む「好気性細菌」で、自ら酸を出して歯を溶かします。 一方、歯周病菌は空気のある場所が苦手な「嫌気性細菌」で、周囲は弱アルカリ性になっています。血液や傷口の滲出液などに含まれるタンパク質を好むので、歯茎が傷ついて、腫れている場所などで増殖し、毛細血管の中に入り込みます。歯の根元付近では、空気に触れる上部が弱酸性なので虫歯菌が増え易いのに対し、空気の届き難い「歯周ポケット」の中は弱アルカリ性なので歯周病菌が増え易くなっています。歯周病を防ぐ方法
歯みがきの工夫
歯周病を防ぐには、先ずは歯磨きが一番大切と分かっていても、磨き方を間違えている方は意外と多いようです。力任せにゴシゴシと擦っても効果はありません。二十歳を過ぎると虫歯予防ではなく、歯周病を予防するための磨き方を学ぶ必要があります。 Bass法(※)による歯磨き ① 歯に45度の角度でブラシをあてる ② 歯と歯、歯と歯肉の間に毛先を集中させる ③ 細かいストロークで振動を与えるように磨く ④ 力を入れて磨かないよう注意する ⑤ 毛先の弾力を活かして、歯の1本ずつを丁寧に磨く ※Bass法:1954年アメリカのCharles C. Bass氏が 、「歯の側面を磨く時は、歯ブラシの毛束を45度の角度で、歯と歯肉の間の溝に直接挿入すべきである」などと、主張したことに始まります。 歯ブラシの毛先が歯と歯の間や、歯周ポケットの入口まで届くように、斜め45度に傾けて当て、毛先の弾力を活かしてプラーク(歯垢)を剥ぎ取ります。尚、歯と歯の間は歯ブラシだけでは不十分なので、歯間ブラシや糸状デンタルフロスを使うことが勧められます。定期的な歯石除去
自分で歯を磨く「セルフケア」だけでは、どうしても取りきれないプラークが残ります。その残ったプラークが硬化してこびりついた歯石は、口内細菌の格好の増殖の場となります。 歯周病や関連する様々な病気を予防するには歯石の除去がとても大切です。年に2~4回は、歯科衛生士に歯石除去などのクリーニングを行ってもらうのがおススメです。プロフェッショナルによる「プロケア」を受けて、定期的に磨き残しを除去すれば、何らかの病気で手術を受けても入院期間が2割は短くなるといわれています。インフルエンザなどにも感染し難く、風邪や肺炎などの病気になるリスクは確実に下がっていきます。 いかがでしたか、人生100年時代を健康に生きるためにも、是非、プロケアを受けることをお勧めします。監修者情報
公開日:2023年07月10日
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