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コラム
認知症の人への口腔健康管理
高齢者の認知症推定有病者は2020年現在約600万人といわれており、65歳以上の約6人に1人が認知症だと推定されています。その中、2019年に日本老年歯科医学会より「認知症の人への歯科治療ガイドライン」が発表されています。そこでは軽度認知障害や認知症患者に対して、歯科医師の対応力向上や、認知症患者の口腔健康管理を切れ目なく地域で継続していくことが推奨されています。そこで今回は認知症の人への口腔健康管理について、ご紹介しましょう。
・口腔乾燥
・咬合力低下
・舌口唇運動機能低下
・低舌圧
・咀嚼機能低下
・嚥下機能低下
いかがでしたか、今回紹介した認知症の人の口腔健康管理、オーラルフレイルの対応に限らず、高齢者の口腔内は多種多様の悩みがあります。お口のことで悩まれている人は、気軽にお近くのかかりつけ歯科医院を受診してください。
認知症患者の口腔内環境
認知症は病状の進行によって口腔のセルフケアや入れ歯の管理能力が低下し、歯科での治療に協力を得ることも難しくなり、口腔内の環境は悪化をたどります。また8020運動推進の成果もあって、80歳でも5割以上の人が20本以上の歯を持つようになることで、歯に問題を抱えるリスクの高い高齢者が増えてきました。そして病院や施設などへ生活の場が変化したり、同居者の介護力が低下することで、口腔への対応が途切れるようになっています。口腔内環境悪化の影響
高齢者の認知機能低下による口腔内環境の悪化や噛む力の低下は、食事摂取量の低下、低栄養と関係づけられています。また高齢期の低栄養は認知症の発症や進行のリスクになると報告されています。よって、歯科専門職が初期の認知症から関わり、口腔内環境を維持することで、QOL向上のみならず、低栄養や認知症発症の予防、進行抑制に貢献することができます。具体的な対応
高齢者に対する具体的な対応としては、認知症の初期段階から「かかりつけの歯科医を持つこと」が大切です。その後は認知症の進行程度や口腔のセルフケア能力、家族の介護負担程度などに応じて、歯科専門職の介入頻度や治療内容を徐々に変えていくことが必要です。治療内容
きめ細やかな歯科治療によって、疼痛が出現し難い、口腔健康管理がし易い口腔内を作ります。また、治療場所も外来通院から訪問診療への切り替えが必要となってくるでしょう。QOLを損ないかねない歯科問題があれば、状況に応じて薬物的調整として静脈内鎮静法などを活用し処置を行うこともあります。口腔外マッサージ
高齢者のQOLの維持・向上には、食べる、話す、笑う、笑顔をつくるなどの口腔機能へのケアが有効です。ともすると口腔内の衛生状態や機能に目を向けがちですが、口腔内のケアのみでは不十分なことがあります。唾液分泌量の増加や口腔機能の回復(※1)及び維持・向上を目的として、口輪筋や頬筋などの口腔機能に深く関連する筋群のマッサージを行うことや、耳下腺・顎下腺などの大唾液腺の賦活化も必要不可欠です。口腔内ケアを行う前に、唾液腺・咀嚼筋・嚥下筋・表情筋などの口腔外をマッサージすることで、口腔周囲に機械的刺激を加え、口腔を支える筋群の緊張を緩め、最大開口量を高め、円滑な咀嚼運動を助け、意識の覚醒を促す効果があります。また、唾液分泌の促進や話す、食べる、表情をつくるなどの口腔機能の向上、咀嚼や嚥下機能の向上が期待できます。オーラルフレイルについて
オーラルフレイルとは、「口の虚弱」という意味で、口腔機能の低下に注目した概念です。最近、むせやすくなった、食べこぼしが増えた、食欲がない、軟らかいものを好んで食べるようになった、滑舌が悪くなった、口が渇き易くなった、歯が抜けたままになっているなどの、口に関する些細な衰えがオーラルフレイルといえます。軽度の認知症患者の多くでは、オーラルフレイルが認められると報告されています。オーラルフレイルの人が抱えるリスク
些細な衰えだと、むし歯や歯周病による噛み難さを放置しておくと、次第に食べやすい軟らかい食品ばかりを好んで食べるようになります。しっかり噛まなくて良い食事を続けると、口の周りの筋力や噛む力が低下し、更に噛める食品が限られてくるという負の連鎖に陥ります。オーラルフレイルの人とそうでない人を比べると、2年以内に身体的フレイルを発症する確率が2.4倍、サルコペニア(※加齢に伴う筋肉量と筋力が減少する状態)発症が約2.1倍、要介護認定が約2.4倍、4年以内に亡くなるリスクは2.1倍だと報告されています。口腔機能低下症
オーラルフレイルは概念だと述べましたが、口腔の機能低下に関しては保険上の病名として「口腔機能低下症」というものがあります。歯科診療所において以下の機能評価が実施され、7項目中3項目以上の該当で「口腔機能低下症」と診断されます。機能評価項目
・口腔衛生状態不良(口腔不潔)・口腔乾燥
・咬合力低下
・舌口唇運動機能低下
・低舌圧
・咀嚼機能低下
・嚥下機能低下
いかがでしたか、今回紹介した認知症の人の口腔健康管理、オーラルフレイルの対応に限らず、高齢者の口腔内は多種多様の悩みがあります。お口のことで悩まれている人は、気軽にお近くのかかりつけ歯科医院を受診してください。
監修者情報
公開日:2023年07月10日
芦屋M&S歯科・矯正クリニックのWebサイトにようこそお越しくださいました。
平成15年の開設以来、芦屋市周辺の皆様のお口の健康維持のために日々診療しています。
当院は虫歯や歯周病治療などの一般歯科をはじめ、インプラント治療や入れ歯治療など歯科全般に対応します。
なかでも得意としているのは矯正歯科です。日本矯正歯科協会に所属する矯正歯科の専門医が小児矯正にも成人矯正にも対応し、インビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置)認定ドクターも在籍しています。
専門的な矯正歯科と一般歯科を並行してご提供して、総合的な口腔ケアをおこなう歯科医院です。
院内は衛生管理の徹底により安心して診療を受けていただけます。そして患者様目線を大切に、家族を診ているような丁寧で痛みをできるだけ抑えた治療をご提供します。
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