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コラム
口腔粘膜疾患の白板症・紅板症について
口腔外科の領域には、歯が原因となるものからガンまで様々な疾患が発生します。また交通事故やスポーツなどの外傷、顎変形症並びに唾液腺疾患などの外科的疾患の以外に、口腔粘膜疾患、神経性疾患、口臭症などの内科的疾患も含まれます。今回はその中で「白板症」「紅板症」について、紹介します。
白板症(はくばんしょう)
症状
身体の外側が皮膚で覆われているように、口の中の粘膜で覆われています。白板症とはその粘膜の最も外側の上皮が肥厚(細胞数が増えて膨らんだ状態)したもので、その下の毛細血管が透けて見えなくなって、結果的に頬粘膜(きょうねんまく)や舌、時には歯肉に見られる白い病変で、こすっても剥離しません。見た目の変化が生じるだけで、必ずしも痛みを伴うわけでもないので、歯科検診などで指摘されて初めて病気だと認識することもあります。 白板症は比較的頻度も高いのですが、舌にできたものは悪性化し易く、前ガン病変の代表といわれ、慎重な対応が求められます。びらん(粘膜の浅い欠損)を伴ったり、ものが当たると痛かったり、食べ物がしみたりします。 白板症は40歳以降で発症し易く、女性より男性に多い傾向があります。これは男性の喫煙率の高さにも関係しています。原因
不適合な義歯や歯の修復物などの鋭縁部による慢性の機械的刺激、喫煙習慣が誘因になったり、アルコールによる刺激、ビタミンAやBの不足、加齢や体質などにも関係するとされます。そのため、これらの原因とされる要素を除くことは大切ですが、まだ、ハッキリとした原因は分かっていません。検査・診断
口の中が白くなる病気は他にもいくつかあり、カビが増殖した真菌症やニコチン性口内炎、乳頭種などがあります。 口腔内に拭っても除去できない白色病変があると、白板症が疑われ、確定診断のための病理組織検査が行われます。病理検査では、病変から組織を一部採取して顕微鏡で観察します。 組織学的には「異形成」と呼ばれる、軽度、中等度、高度の3段階に分類された変化を起こし、高度の場合はガン化し易くなるといわれています。 病理検査により、上皮内ガン、あるいは扁平上皮ガンなどの結果があった場合は口腔ガンと診断されます。治療
ビタミンAの投与や、禁煙によって治癒することもあります。しこりや潰瘍を伴うものは初期がんが疑われるので、組織を採って検査することが必要です(生検)。白い部分が厚いもの、隆起したもの、びらんや潰瘍を伴うものは悪性にガン化する可能性が高いので、切除することになります。 除去の際には、ヨード溶液を用いた生体染色を行い、不染域(染まっていない部位)を含めた切除が必要となります。切除後の再発や、別の口腔粘膜に発症したり、長くかかって悪性化する場合もあり、長期経過観察が必要です。 薬物療法では白板症の大きさや発症している場所、または全身症状がでている場合には、外科手術が受けられないので抗ガン剤を使って治療を行います。5-Fluorouracilを使った5-FU軟膏を局所に投与する方法が効果的だとされています。紅板症(こうばんしょう)
紅板症の症状
紅色肥厚症(こうしょくひこうしょう)とも呼ばれ、潰瘍ができたり患部が盛り上がったりすることもあります。触ったり、刺激物を食べたりすると痛みがあり、鮮紅色のビロード状で表面は平滑な病変で、舌、歯肉、その他の口腔粘膜に発生します。境界は明瞭なものが多く、初めて発病する場合には、刺激痛が多くで認められます。稀な病気ですが、一般的には50~70歳代の高齢者が全体で80%を占めています。また、白板症が約5~20%のガン化率に対し、紅板症は50%前後でガン化する可能性があります。ガン化すると他の臓器や血液などに転移する可能性も十分に考えられ、口内炎のような症状であっても、長く続く場合は注意する必要があります。ガンが進行してリンパに転移した場合、顎の下などに腫れが出るなど症状は通常のガンと同じです。紅板症の原因
正確な原因は分かっていませんが、白板症と同じように、以下の口内の慢性的な様々な刺激などが考えられます。 ・アルコール、タバコ、不良補綴物、ビタミンA,Bの不足、加齢など。紅板症の診断
口腔粘膜が境界明瞭で鮮紅色なビロード状になります。類似した病気である白板症や、口腔カンジダ症の紅班型、扁平苔癬(かゆみを伴う発疹が現れる病気)、口内炎などとの鑑別が必要となります。紅板症の治療
外科的には切除することが望ましいといえます。内臓などのガンと比べると、身体への負担はあるものの、比較的簡単な手術となっています。手術することで、ガン化する前に患部を摘出し、ガン化を阻止します。しかし、悪性化する可能性が高いため、治療後にも経過観察を行う必要があります。 いかがでしたか、白板症・紅板症は、共に舌への刺激により発症すると考えられます。普段の生活の中で、舌を刺激し易いアルコールや喫煙を控えることが、予防につながります。監修者情報
公開日:2023年07月10日
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