矯正治療で起こる歯根吸収とは

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コラム

矯正治療で起こる歯根吸収とは

歯の矯正治療を受ける場合には、メリットばかりでなく、矯正で起こりえるリスクについても承知しておくことが大切です。歯根吸収はそれらで挙げられるリスクの一つです。歯の矯正において、歯根吸収はつきものといわれるくらい高確率で生じる可能性のあるトラブルとなっています。今回は歯根吸収が起こり易い原因やその対処法について、ご紹介しましょう。

歯根吸収とは

口を開けた時に見える歯の白い部分は「歯冠」と呼び、歯肉に埋まって見えない部分を「歯根」といいます。矯正治療で歯を移動すると、歯の根っこである歯根の一部が、何らかの原因で吸収されて溶けて短くなったり、なくなったりすることを、歯根吸収といいます。歯根吸収には、歯根の先端や外側から吸収される外部吸収と、歯根の中から吸収が起こる内部吸収の2つのパターンがあります。

歯根吸収が起きた場合のリスク

矯正治療を受けている患者さんの約7割以上において、レントゲンで歯根吸収が見られると報告されています。ただし、その多くは1~2ミリ前後歯根が短くなった程度で、歯の予後に大きな影響を与えるものではありません。しかし、患者さんによっては著しく歯根吸収が進むケースがあり、その場合は歯がグラグラと揺れ始める恐れがあります。治療期間中に大きな歯根吸収が見つかったら、進行しないように2~3ヶ月程度、歯に力を加えないようにする、治療計画の見直し・中止などの対策を講じる必要があります。

歯根吸収が起きる原因とメカニズム

強すぎる矯正力

矯正治療の時に歯根吸収が起きる主な原因としては、矯正力の強さが挙げられます。歯に矯正力を加えることで、歯根膜に接する歯槽骨に変化が起こります。力が加わって歯が動く方向の骨が溶けていき、反対側に骨が作られていきます。これを繰り返すことで歯が動くのですが、このメカニズムを正しく起こすためには、歯に適切な力を加えなければなりません。この加える力が強すぎると、歯根吸収の原因となるのです。

ジグリング

歯の動かし方には様々な方法がありますが、ジグリングでは歯を左右にわずかに傾けながら、少しずつ動かします。これによって歯根の先端に力がかかり、歯根吸収のリスクが高まります。

歯の移動距離が長い

個人差はありますが、矯正治療で歯を動かす距離は、1ヶ月で約1ミリ前後です。長期にわたって少しずつ動かすので、患者さんには根気強さが求められます。抜歯などで歯を大きく移動させる必要がある場合は、ジグリングの回数が多くなり歯根にかかる負荷も大きくなります。出っ歯や受け口のように、歯を大きく動かす必要がある場合では、長い距離を短期間で移動させると歯根吸収のリスクが高まります。

アレルギーがある

アレルギー疾患のある患者さんが矯正治療を受けると、歯根吸収のリスクが高くなると報告されています。九州大学でのアレルギー疾患ラットによる実験では、炎症性サイトカイン(破骨細胞分化促進因子)の発現量が増加しています。

歯根吸収が起きた場合の治療法

経過観察

程度の軽い歯根吸収では、経過観察することが多いです。通院中の歯科医院で定期的にレントゲン撮影を行いながら様子を見ることになります。観察の結果、著しい歯根吸収が見られた場合は、歯に力をかけることを止めて、歯根への負担を減らすために2~3ヶ月ほど、矯正治療を中断することがあります。

抜髄

歯の内部にある歯髄側から歯根が吸収される、内部吸収による歯根吸収では、局所麻酔を用いて炎症のある歯髄を取り除く、抜髄という処置が行われます。 いかがでしたか、歯根吸収は矯正治療において起こり易いリスクの1つとなっています。軽度の場合は自覚症状が少なく、経過観察となることが多いですが、重度の場合は矯正治療を中断せざるを得ないこともあります。矯正治療の際には、これらのことも含めて歯科医師と相談しながら、治療を進めてください。

監修者情報

公開日:2023年07月10日

理事長

理事長 松岡 伸輔

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