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コラム
歯周病の感染について
さて問題です、「全世界で最も患者さんが多い病気は何でしょうか?」 答えは、2001年ギネスブックに掲載された「歯周病」です。厚生労働省の調査においても、「国民の8割が歯周病」と謳われているほどです。なぜ、そんなに歯周病にかかる人が多いのでしょうか? それは歯周病が感染するからです。そこで今回は「感染する歯周病について」、ご紹介します。
歯周病は人にうつる感染症
感染する病気といえば、近年では新型コロナウイルス感染症や、毎年のように流行するインフルエンザなどが身近となっています。これらは流行すると一気に感染者が増えますが、ほとんどの方はその後回復し、ウィルスは体内からなくなります。しかし、歯周病はサイレントディジーズ(静かな病気)といわれ、無自覚のうちに進行して、治療しても細菌は常在菌として口腔内に棲み続けるのです。そのせいで、本人が気づかないうちに、家族などにうつってしまうことが多いのです。歯周病の感染経路
歯周病の感染は他人の唾液を介してうつります。親が使ったのと同じ箸で子供に食べ物を与えたり、飲み物を回し飲みしたり、親子や恋人同士のキスなどによってうつります。過去には祖父母が咀嚼して柔らかくした食物を、幼児に与えることもありましたが、これらももちろん感染する危険な行為といえます。歯周病に関係する細菌
口内には500~700種類の細菌が、少なくても1,000億個以上が生息しているといわれています。これら全ての細菌が人にとって悪い菌というわけではありません。その中で主に、[Pg菌、Aa菌、Pi菌、Tf菌、Td菌]が、歯周病に関連しているといわれ、唾液を通じて感染します。2つの感染
感染経路には、垂直感染と水平感染の2種類があります。垂直感染は、親から子供へ伝播することをいいます。若い親御さんが歯を失う、若いうちから歯周病の傾向がある場合は垂直感染が疑われます。水平感染は垂直感染以外での感染をいい、人や物から周囲に広がります。夫婦・恋人・家族間のキスや、飲み物の回し飲み、食べ物のシェアなどが原因となっています。歯周病はこどもにもうつる?
歯周病は、親から子への垂直感染、また家族や親せき、友人からの水平感染もある病気ですが、子どもにすぐ症状が現れるというものでもありません。感染後、歯周病菌は常在菌として口腔内に生息し続けます。やがて子供が大人になってくると、口腔内の清潔状況や菌の繁殖状況などによって、歯周病の症状が現れ始めるのです。中には若いうちに現れる「若年性歯周炎」もありますが、主に35歳前後からその症状を感じ始めて、50代以降で歯を失うなど、重症化することが多い病気です。歯周病は一度感染すると、お口の中からその菌を取り除くことができず、症状が出るまで感染していることに気づかない恐れのある厄介な病気といえます。遺伝性が考えられる侵襲性歯周炎(若年性歯周炎)
一般的な歯周病とは原因や治療法が異なり、改善しにくいのが侵襲性歯周炎です。10~20代に多く、全身に現れる症状はなく、歯周炎の症状のみ現れ、家族内で同じような症状が現れることもあります。進行し易いので早期治療が必要となり、一般的な歯周病治療に加えて、薬物療法や外科的治療が行われます。侵襲性歯周炎の症状
まず歯茎が腫れて出血しますが、この段階なら適切な治療を行うことで完治できます。しかし、これを放置していると歯を支えている骨へと影響が出始め、歯槽骨や歯根膜が破壊されて歯がグラついたり、痛みを伴うようになると、最終的に歯が抜け落ちてしまうことになります。侵襲性歯周炎(若年性歯周炎)とは
比較的若くして発症し、急速に進行する歯周病で、早期の診断と外科処置を含めた早めの積極的治療が必要となっています。侵襲性歯周炎は、プラークや歯茎の下の歯石量が少なくても、歯周ポケットが深くて、歯槽骨の吸収量が多いため、症状が進みます。また、通常の歯周基本治療でのプラーク除去では効果が現れにくく、難治性の傾向を示しています。以前の分類では、若年性歯周炎や早期発症性歯周炎、成人性歯周炎など、対象年齢に合わせて分類されていましたが、現在は年齢による分類はありません。これは、30~40歳代の中間年齢層において、年齢による診断が特に困難になってきたことや、侵襲性歯周炎でもその発症が遅れたり、慢性歯周炎が若年層にまれに発症するなど、年齢と歯周ポケットの深さ、歯槽骨の吸収量といった単純な対比では診断が困難だからです。細菌検査でAa陽性の場合
慢性歯周炎は不特定のいろんな歯周病菌の感染により発症しますが、侵襲性歯周炎はAaやPgといった特定の細菌と関連があるので、Aa(+)なら侵襲性歯周炎と診断される傾向にあります。以前の分類による「若年性歯周炎」の患者では、高頻度でAaに対する血清抗体値が高いと報告されていました。しかし、明らかに侵襲性歯周炎の病態の患者でも、細菌検査でAaが認められたのは約35%に過ぎず、逆に明らかに慢性歯周炎の病態の患者で、Aaが認められたものは約20%あります。さらに、健常者にも約10%の割合でAaが検出されているので、統計学的な有意差は認められなかったと報告されています。 いかがでしたか、一般的な慢性歯周炎は進行が緩やかなので経過観察を行いながらの対応が可能です。しかし、侵襲性歯周炎では急速に歯周ポケットが拡大し、歯槽骨吸収を起こすので早期の積極的な治療アプローチが求められます。歯茎が変だなと感じたら、まず歯科医院で検査を受けてみてください。監修者情報
公開日:2023年07月10日
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