歯周病とうつの関係

現代はストレス社会と呼ばれますが、そのストレスを貯めすぎると、うつ病に発展します。そして、このストレスは歯周病とも大きく関係しているのです。今回は、ストレスやうつ病がどのように歯周病と関係してくるのかについて、ご紹介します。

ストレスと歯周病の関係

ストレスは歯周病を引き起こす

ストレスに限らず緊張した場面では、喉の渇きを実感する方も多くいるでしょう。この喉の渇きが歯周病と関係してくるのです。

喉の渇きは唾液不足から

緊張した場面で、のどの渇きを異常に感じるのは唾液の不足が原因となっています。口の中には唾液が常に存在し、歯周病菌などの殺菌や、歯が再石灰化するのに必要な栄養の供給などを行っています。しかし、ストレス状態が続くと、唾液を出す唾液腺の働きが悪くなり、口内が乾燥しやすくなるので、喉の渇きを異常に感じるようになるのです。そのせいで、口内の殺菌ができず、虫歯によって溶かされた歯を再石灰化することも遅れます。このように口内菌が好き勝手出来る環境に陥り、歯周病になり易くなるのです。

ストレスによる喉の渇き

喉の渇きは本来、体内の水分が不足した時に起こります。しかし、ストレスを抱えた時に飲み物をいくら飲んでも、喉の渇きが癒えないと感じたことはありませんか。これには理由があって、真夏の発汗によって体内の水分が不足した場合に起こる喉の渇きと異なり、ストレスの場合は、唾液腺の機能異常のせいですから、本当の意味での喉の渇きではないのです。その結果、唾液腺の機能が正常にならない限り、脳が喉の渇きを訴え続けるので水分過多に陥ります。体内に余分な水分が蓄積されて、利尿作用によりトイレに何度も通うことにもなります。このようにストレスによる悪循環があり、女性の場合はむくみなどの症状を加速させる原因となります。

歯周病とうつ病の気になる関係

歯肉炎とうつ病の発症率

アメリカの歯周病学会によりますと、2021年にヨーロッパ研究者たちが歯肉炎とうつ病の関係を明らかにしました。内容は、”歯肉炎を起こした患者はそうでない患者に比べて、その後のうつ病の発症率が1.8倍高かった”という研究発表でした。2000年～2016年にイギリスにおいて、歯肉炎の患者さんとそうでない患者さん6544人ずつを調べた結果、歯肉炎の患者さんの16.3％がその後うつ病と診断しました。尚、歯肉炎でない患者さんの発症率は8.8％ですから、その違いは1.82倍となっているのです。この研究報告により、口腔内の健康維持の重要性が浮き彫りになり、特にその傾向は若者に顕著となっています。

うつ病の治療薬も歯周病を加速

心療内科ではうつ病の治療として、以下の薬などが処方されます。これらには喉の渇きがおこる副作用があります。

ジェイゾロフト錠の副作用

吐き気、口の渇き、ふるえ、立ちくらみ、肝機能障害、不整脈、便秘など

スルピリド錠の副作用

胃腸障害（悪心※、下痢など）、傾眠、頭痛、口の渇き、浮動性めまいなど。患者の0.5%において躁病や軽躁病を誘発することがあります。 ※悪心：前胸部、咽頭にかけて生じる吐き気という不快な感覚 うつ病治療を始めると、ストレスはある程度解放されますが、治療薬の副作用によって唾液分泌が低下し、歯周病につながる可能性のあることを知っておいてください。 歯周病が生み出す炎症物質であるサイトカインが、口内の毛細血管から取り込まれて脳まで達すると、認知症の原因となるアミロイドβというたんぱく質が増加します。これが神経細胞の働きを低下させて、物忘れや記憶障害を起こし、最終的に認知症へと進行してしまいます。

歯周病菌が引き起こす疾病

歯周病によって炎症物質が体内に取り込まれると、全身の血管において炎症を起こし、以下のような様々な疾病を引き起こします。 ・脳梗塞 ・心筋梗塞 ・動脈硬化 ・心臓弁膜症 ・狭心症 ・誤嚥性肺炎 ・糖尿病 ・うつ いかがでしたか、食と密接に関係する歯の健康のことですから、不調を放置して認知症やうつ、寝たきりの原因にならないよう、気を付けてください。