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コラム
歯を残す治療方法(エクストルージョン法、その他)
他院で抜歯と言われて、インプラント(※1)やブリッジを勧められたけれど、自分の歯をなるべく使いたい、そのように希望する患者さんには、歯を残せる可能性がある治療法があります。今回はそのような歯を残す治療法(特にエクストルージョン法、その他)について紹介します。
※印については、以前に述べたブログ#の項目を参照してください。
エクストルージョン法
エクストルージョン(歯根廷出)法とは、矯正的に歯を引っ張り出す治療のことをいい、部分矯正の一種で、矯正的廷出、歯根廷出術とも呼ばれます。歯が割れたり、むし歯が進行して、歯が歯肉内に埋もれていると、被せ物を造ることが出来ず抜歯治療しか選択肢がありませんでした。しかし、このエクストルージョンを行うことで、歯を引っ張り上げて被せ物を造ることが可能になります。弱い力で引っ張り上げるので、痛みはほとんどありませんが、治療を始めた数日は違和感を感じる方が多いようです。
治療対象
・歯が割れてしまったり、むし歯などが原因で歯茎より下に歯の表面がある場合
・前歯の場合
治療の流れ
天然歯や現在の被せ物が歯の頭から折れて、歯根だけが歯茎の中に残っている場合、一般的には抜歯が選択されます。この場合に、針金やゴムを使用して、歯茎の中の短い歯根を引っ張り、廷出された歯根の頭に被せ物を被せるという、自身の歯根を有効活用できる歯の保存方法です。
・前歯において、元々入っていた土台のファイバーコアが取れてしまい、他院で「抜歯して、インプラントかブリッジが妥当」といわれた。
・隣接する歯の裏に針金を固定する
・針金にフックをかけて、ゴムの力で埋まっている歯根を引っ張り出す。
・矯正中は仮歯を入れるので、見た目に支障はありません。
・歯の移動に伴い歯肉も同時に引っ張り出されるので、途中で歯肉形成も行われています。
・歯肉の縁から1㎜以上の歯質を出すことが、被せ物のできる絶対条件(世界基準の数値)となっています。
・自身の歯根を使って土台のファイバーコアポストを立てて、被せ物(オールセラミッククラウンなど)を被せます。
治療期間
3ヶ月程度 ※引っ張り上げる程度によります
よくある質問Q&A
Q1:埋まっている部分の歯根が短くなって、強度は大丈夫?
A1:通常の健康的な歯根より短くなりますが、最終的な被せ物の長さとの比率が1:1でキープされるなら、抜歯せずに十分に生活歯として使えます。
Q2:奥歯にも有効ですか?
A2:奥歯では、前歯に比べて時間がかかり、歯の頭が折れても、骨と歯茎を削って歯根を出せれば目立たない位置なので、エクストルージョン法でなくても十分に被せ物が可能です。
歯根端切除術
抜歯しなければならない時に、歯の根の先に膿が溜まり、根の治療だけでは治らない場合があります。その場合、歯の根の側から膿を取り出すのではなく、歯茎の方から膿の溜まった病巣を取り除く外科的な処置が歯根端切除術です。これが成功すれば歯を残すことができます。
治療対象
・歯の神経を取り除く根管治療を行ったが、感染が残り膿が溜まるなどの理由で、強い痛みと炎症(根尖病巣、歯根嚢胞)が続く場合
・歯の根の形状が複雑で、根管治療を完全に行うことが難しい場合
・歯の土台を外して中の治療を行うのが難しい場合
・被せ物がセラミックなので、被せ物を外したくない場合
治療期間
・10日~2週間程度(1回目に治療、2回目に抜糸)
※半年後に検査を行います
意図的再植治療
治療のために一旦歯を抜いて、悪い部分を治療してから、抜いた歯を再度元に戻す治療です。歯の根は歯根膜という細胞の膜に覆われており、この膜の細胞が死なない限り、一度抜いても高確率で元に戻すことができます。歯の根の先に病巣がある場合は、意図的に歯を抜くことで直接患部を治療できるので、歯を残す可能性が生まれます。尚、抜いた歯は、歯根膜組織が死なないよう、すぐに細胞培養液に保存され、1時間以内に治療を終わらせます。
治療対象
・歯の根に病巣があり、抜歯しなければならないといわれた方
・歯の根が割れて、抜歯しないといけないといわれた方
・下顎の奥歯や病巣が骨の内側にあって、歯根端切除術ができない場合
治療期間
・経過観察を含めて約3ヶ月
失った歯の代わりとなる治療法も進化し、天然歯に近いインプラントも選択できるようになりました。それでも自分の歯を残せることに越したことはありません。そのために必要なのが、天然歯にしか存在しない「歯根膜」です。エクストルージョン法なら歯根膜を活かして、天然歯を残せます。