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コラム
歯と口から始める健康寿命
超高齢社会に突入した日本にとって、社会保障費の増大や生産年齢人口の減少など、”待ったなし”の課題を前に、健康寿命を延ばすことは最も大事な命題の一つです。現在、健康寿命と平均寿命には約10年の差があります。国は、個人や企業・団体を巻き込んで「運動」「禁煙」「食生活」を柱に据えた、健康診断やがん検診などの予防策を講じています。そして今、口腔の健康、なかでも歯周病と全身疾患のリスクとの関連性が注目を集めています。そこで今回は、歯と口から始める健康寿命について、ご紹介します。
歯周病と全身の病気リスクとの関係
歯周病は、45歳以上の方の2人に1人がかかる国民病といわれています。歯を失うだけでなく、全身の病気の発症や、より悪くなるリスクと深く関わることが、明らかになってきました。例えば、2020年の「歯周病の原因菌やその毒素が脳に蓄積して、認知症(※1)の原因物質がつくられる」という、九州大学研究チームらが解明した認知症発症メカニズムがあります。歯周病と全身の疾患との関係は世界で研究されています。脳卒中や心筋梗塞に代表される循環器疾患やがん、糖尿病のほか、認知症や呼吸器疾患との関連も注目されています。全身の病気リスクとの増加率
ガンー1.24倍 脳梗塞ー1.63倍 糖尿病ー1.98倍 狭心症・心筋梗塞ー2.11倍 早産・低体重児出産ー3倍歯周病は糖尿病の合併症
研究報告数の多いのが糖尿病関連で、そのリスクは約2倍となっています。糖の代謝異常で血管がボロボロになる糖尿病も、国民病の一つです。患者さんの多さに加えて、網膜症や腎症、神経障害など、QOL(生活の質)を大きく落とす合併症を起こすことが問題といえます。歯周病のある糖尿病患者に歯周病治療を行うと、血糖値が改善します。その一方で、糖尿病で免疫機能が低下すると歯周組織の炎症が進んで、歯周病が悪化します。歯周病と糖尿病には双方向の関連性があるのです。歯周病は口内の慢性的炎症
歯周病と全身疾患をつなぐキーワードは「炎症」です。体の防御機構である免疫が、ウイルスや菌の感染などで細胞が傷ついたときに、その原因物質を排除して傷を修復する過程で起こる反応が炎症ですから、本来は有害なものではないのです。しかし、炎症が慢性化すると、修復が追い付かずに消耗し、全身の免疫力が落ちてしまうのです。こうなると、新たな病原体が侵入し易くなる上に、炎症が続くことで、本来、免疫の攻撃対象でない健康な組織も損傷を受け易くなるのです。体に炎症があると、血管や脳・腎臓などの臓器が攻撃されます。動脈硬化や糖尿病、がんといった生活習慣病は、慢性化した炎症があると、その攻撃を受けて悪化していきます。そこで、疾患を遠ざけて健康寿命を延ばすには、「体の炎症を取り除くこと」で、免疫の無駄遣いをなくすことが大切です。歯周ポケットに侵入した細菌が歯肉に炎症を起こし、歯を支える骨を溶かす歯周病は、口内における慢性的な炎症といえます。口腔の健康管理が全身に及ぼす理由
歯周病の炎症は継続し易い
歯周病は病気であるという自覚に乏しく、日々の歯磨きを丁寧に行っても、原因菌を完全に除去するのが不可能なのです。口内には常在菌が存在し、食生活やストレスの影響で、悪玉菌が善玉菌より優勢になって炎症を引き起こすので、常にコントロールを必要とします。口腔は防御の最初のとりで
ウイルスや菌は、口腔や鼻腔、皮膚、消化管などの外界と接する粘膜を経て血中に入ります。そのうち皮膚や胃腸などの消化管は、バリア機能や強力な殺菌作用のある胃酸、発達した腸管免疫を備えているので、守りが固いです。しかし、口腔や鼻腔の免疫組織はそれに比べると弱く、病原体が入り込み易いのです。高齢者に誤嚥性肺炎が多いのは、加齢や持病で体の免疫が弱っている上に、菌の侵入経路である口や気道が、胃や腸のような強い免疫を持っていないからだといえます。口内に炎症があると原因菌の防御が間に合わずに、気道から肺に達して肺炎になってしまうのです。術後の患者さんで不明熱から高熱を発している人の血中の菌を調べると、その原因菌の約半分が口腔の菌だという報告があります。全身のどの部位でも炎症が続くと体の負担になりますが、特に口腔の場合は、慢性的に炎症が持続し、除去が困難になることが問題です。これは若い世代にもいえることで、将来体力が落ちた時に全身疾患の発症や悪い誘因を少しでも減らすためにも、今から積極的に口腔ケアをしておくことが望ましいです。口腔の健康保持は将来への投資
口腔ケアは医療費総額を抑える
手術前後に歯科専門職による口腔内の治療・管理を受けていると、炎症(歯血症)の原因となる口腔細菌が半減したという研究があります。東京大学イートロス医学講座によると、糖尿病で歯周病治療を行うと、その後3ヶ月間では重症度の指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)値が改善したと報告されています。また、消化器がんの手術をした患者さんに口腔機能管理を実施することで、合併症が減る、在院日数が短くなるなど、口腔が健康であれば回復が早まり、早く退院できるわけです。このような結果は支払う医療費にも影響します。アメリカでは、約15,000人の糖尿病患者に2年間の歯周病治療を行うと、しなかった人と比べてその後2年間の医療費総額と糖尿病治療費が、共に少なかったと報告されています。2017年に日本でも、約1,590,000件のレセプト(診療報酬明細書)を対象にした研究でも、歯の本数が多い人ほど、支払った1ケ月の医療費が少なかったという結果がでています。 いかがでしたか、口腔の健康維持は「健康への投資、生活の質(QOL)を高く維持するための投資」なのです。若いうちに病気にならないことが、予防(※2.3)という投資の最大の効果といえます。監修者情報
公開日:2023年07月10日
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