咀嚼と認知症の関係

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コラム

咀嚼と認知症の関係

65歳以上の高齢者が多い日本では、認知症の患者数が増える傾向にあります。軽度認知障害を含めて、認知症患者数は1000万人近くいると思われるので、高齢者の4人に1人は認知症ということになります。今回は、そのような「認知症と口腔環境の関連性」について、ご紹介します。

歯がなくなると認知症になり易い

あるクリニックで認知症患者さんたちの歯を調べると、75歳以上の患者さんの25%が、歯が1本もない総入れ歯だったという報告があります。尚、厚生労働省の発表でも、75歳以上の方の総入れ歯率は18.24%となっています。東北大学大学院の研究グループによる、70歳以上の高齢者対象の調査でも、「脳が健康な人」の歯は平均14.9本ですが、「認知症の疑いがある」と診断された人では9.4本となっていました。現在、歯の抜ける大きな原因となっている歯周病菌は、アルツハイマー型認知症の原因となることもわかっています。「歯がない人はボケやすい」というのは、介護医療の現場では共有された事実といえます。

歯がないとボケやすい理由

歯の下には「歯根膜」とよばれるクッションのような器官があります。物を噛むと、歯は歯根膜に約30ミクロン(0.03㎜)ぐらい沈み込みます。これにより歯根膜の下にある血管が圧縮され、ポンプのように血液を脳に送り込むのです。1回噛み込んで送り込まれる血液量は約3.5mlです。お弁当についている魚の形の醬油入れと同じくらいの量をイメージしてください。これだけの血液が噛むたびに送り込まれるとなると、その重要性は大きいといえます。送り込まれた血液により脳は刺激を受けるわけですから、噛めば噛むほど脳は活性化されていくことになります。逆に、歯の本数が少ないほど歯根膜にかかる圧力が減り、脳に送り込まれる血液量も減ってきます。そのため、脳への刺激が減り、脳の機能も低下していくことになります。また、脳の中で動作を司る「運動野」と、感覚を司る「感覚野」の其々の3分の1は、口と密接につながっているので,口からの刺激は脳の広い範囲に影響を及ぼすことになります。

認知症の現状

毎年敬老の日の前後に総務省統計局から出される高齢者人口は、2023年9月現在、65歳以上で約3623万人となり、高齢者人口率は29.1%で過去最高となっています。65歳以上の認知症有病者数は約600万人(2020年現在)と推計され、2025年には約700万人になると予想されています。認知症の定義は、「記憶障害のほかに、失語、失行、失認、実行機能の傷害が1つ以上加わった結果、社会生活あるいは職業上に明らかに支障をきたし、かつての能力レベルの明らかな低下が見られる状態」とされています。「アルツハイマー型」「血管性」「レビー小体型」などの認知症に分けられ、アルツハイマー型認知症が最多の約半数を占めています。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、脳の中にアミロイドβというたんぱく質が溜まり、正常な脳神経細胞を壊して脳を徐々に委縮させます。短期記憶を司る海馬に起こると、体験したことを忘れる記憶障害となり、新しいことを覚えられなくなります。また、見当識障害といって年月日や時間、季節感覚などが薄れていきます。さらに進むと、今自分がどこにいるのか、また人物が分からなくなり、その他理解力や判断力が低下していきます。認知症の中でも一番多く、男性より女性に多くみられます。尚、他の認知症患者数が横ばいであるのに対し、増加傾向にあると報告されています。
血管性認知症
脳血管障害(脳卒中)によって起こる認知症のことをいいます。他の認知症でも見られる症状(記憶障害、見当識障害、注意障害、言語障害など)と、脳血管障害による神経症状(運動麻痺、歩行障害、感覚障害、構音障害、嚥下障害などの局所神経症状)が認められます。脳の様々な部位に起こるので、現れる症状も様々なため、記憶障害が目立つものの判断力や専門知識は保たれるなどの状態となり、「まだら認知症」とも呼ばれます。抑うつ症状や不安、意欲低下、感情鈍麻や感情失禁、動作緩慢などを伴うこともあります。
レビー小体型認知症
レビー小体という神経細胞にできる特殊なたんぱく質の増加が原因とされ、認知症の20%を占めています。通常型はアルツハイマー型認知症の発症と同じように70歳前後の高齢者に多く、初期症状として記憶障害が多く見られます。純粋型は30~40歳代前後の若年層に多く、認知障害はほとんど見られませんが、パーキンソン症状の発症が多く、パーキンソン病と診断されることが多くあります。ただ、パーキンソン病に比べて、手足の震えや、筋肉のこわばりなどの運動障害が少ないのが特徴的です。 認知症に伴う要介護認定の調査によると、年齢や所得、生活習慣などの影響を取り除いても、歯の数が少ないうえ義歯を使用していない人は、20本以上の歯がある人と比べて、認知症の発症リスクが2倍近く高まると報告されています。しっかり噛むことで認知症を予防してください。

監修者情報

公開日:2023年07月10日

理事長

理事長 松岡 伸輔

芦屋M&S歯科・矯正クリニックのWebサイトにようこそお越しくださいました。
平成15年の開設以来、芦屋市周辺の皆様のお口の健康維持のために日々診療しています。

当院は虫歯や歯周病治療などの一般歯科をはじめ、インプラント治療や入れ歯治療など歯科全般に対応します。
なかでも得意としているのは矯正歯科です。日本矯正歯科協会に所属する矯正歯科の専門医が小児矯正にも成人矯正にも対応し、インビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置)認定ドクターも在籍しています。
専門的な矯正歯科と一般歯科を並行してご提供して、総合的な口腔ケアをおこなう歯科医院です。
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