タバコが歯周病の進行を早める

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コラム

タバコが歯周病の進行を早める

「タバコは百害あって一利なし」といわれるほど、様々な病気の原因となります。中でも、「タバコの三悪」と呼ばれるニコチン・タール・一酸化炭素以外に、200種類ほどの有害物質が体内に取り込まれて、歯周病を進行させ、治癒を遅らせるとされています。今回はタバコが歯周病にどのような影響を与えるかなどについて、ご紹介しましょう。

「タバコの三悪」の特徴

ニコチン

ニコチンはタバコの葉に含まれる毒性の強い物質です。即効性が強く、脳に影響を与えることで、依存性を引き起こす原因となっています。尚、煙を吸い込むだけでなく、皮膚からも体内に吸収されるので、タバコを吸わない人にも影響があります。

タール

タールはタバコの葉が燃える際に発生する黒褐色の液体で、歯の表面に付着する「ヤニ」のことです。高い粘質性があり、水にほとんど溶けずに、歯面や気管、気管支、肺などに沈着すると、体外に排出され難くなります。

一酸化炭素

タバコの葉が燃えると、酸素不足によって不完全燃焼が起こって一酸化炭素が発生します。一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと結合し易いので、急激に摂取すると、血液が十分に酸素を運搬することができなくなり、酸欠状態に陥ります。

タバコと歯周病の関係性

進行を促す要因

ニコチンのような有害物質が体内に取り込まれると、免疫力が低下し細菌感染による炎症が起こり易くなります。その上、喫煙によって体内のビタミンCが大量に消費されて、さらに免疫機能が低下してしまいます。また、ニコチンの血管収縮作用や一酸化炭素によってヘモグロビン濃度が低下し、歯周ポケットの中の酸素分圧が低下することで、嫌気性の歯周病原菌が繁殖し易い状態になるのです。また、タール(ヤニ)が歯面に付着すると、歯周病の原因となる歯石が付き易くなるので、症状が進行し易くなるのです。

治癒を妨げる要因

ニコチンが血管を収縮させる作用により炎症や出血が起こり難くなるため、歯周病に気づかないことがあります。また、メラニン色素沈着によって歯肉が黒ずむと、歯肉に炎症が起こっても見逃し易くなります。さらに、歯周病を悪化させるだけでなく、治り難くする役割も果たしています。歯肉表面を覆う上皮細胞や、傷の修復に関わる線維芽細胞の機能が障害されて、歯周組織の修復能力が低下するので、治癒を遅らせるのです。

受動喫煙も影響

本人は喫煙していなくても、他人が吸っているタバコの煙(副流煙)を吸い込むことで、健康被害を受けることを受動喫煙といいます。タバコを吸っている人が吸い込む主流煙よりも、タバコから立ち上る副流煙のほうが毒性は強いのです。例えば、タールは主流煙の3倍、アンモニアは46倍、一酸化炭素は5倍、ニトロサミンは50倍となっています。親がタバコを吸っている場合は、子どもの歯周病や歯肉のメラニン色素沈着のリスクが高まってきます。乳幼児や未成年者では受動喫煙の影響が大きく、親が喫煙者の場合、受動喫煙により80%近くの子どもの歯肉に着色が現れます。また、喫煙者が周りにいると、喫煙に対する抵抗感がなくなって、早期に喫煙を始める子どもが多く見られます。タバコの煙の粒子は非常に細かく、「非喫煙者の傍では吸わない」「歩きタバコはしない」「喫煙は必ず禁煙コーナーでする」など、公共マナーをしっかり守ることで受動喫煙を防ぐ必要があります。

禁煙による効果

タバコをやめると数日後には、歯肉の血流量が増え、炎症に伴って歯肉溝から分泌される浸出液が減少し始めます。これにより、歯周病治療後に治癒が見られて、歯周組織の破壊を抑えることができます。さらに、禁煙1年後くらいになると、歯の喪失リスクが低下し始め、10年以上続けると非喫煙者と同レベル程度までに回復します。
禁煙を始めるにあたって
・何のために禁煙するのか、明確で強い意志を持つこと。 ・吸いたい気持ちを発散させる方法を考えておくこと。 ・周囲の環境を整え、協力してくれる仲間づくりを行うこと。 ・専門家による禁煙サポート(カウンセリングとニコチン代替療法)を受けること。 禁煙支援には「禁煙開始支援」と「禁煙継続支援」があり、ニコチン代替療法で使うニコチンガムとニコチンバッチの2種類を正しく使い分けることで有効となります。長期間にわたる禁煙サポート体制にはインターネットや携帯電話の利用が、禁煙成功率の向上に役立っています。尚、日本歯周病学会のHP禁煙推進資材 | 出版物 | 日本歯周病学会 (perio.jp) に禁煙支援に関する情報がまとめられているので、参考にしてください。

タバコによる歯周病リスクへの正しい理解が必要

タバコは肺ガンや脳卒中、心筋梗塞などの深刻な疾患の原因となることは広く知られています。しかし、歯周病の進行に関わっていることについては、あまり知られていません。たかが歯の病気だから、「少ない本数だから問題ない」「自覚症状がないから問題ない」などと高をくくっていると、歯周病によって歯を失うだけでなく、認知症のような重篤な症状を引き起こす恐れがあります。 いかがでしたか、禁煙はお口だけに留まらず全身の健康にとって、大きな意義があります。歯周病や大きな病気にかかるリスクを減らすだけでなく、周囲の方へ被害を及ぼすこともなくなります。高齢化社会の現代、生活の質の向上にとっても、禁煙は重要なポイントとなっています。

監修者情報

公開日:2023年07月10日

理事長

理事長 松岡 伸輔

芦屋M&S歯科・矯正クリニックのWebサイトにようこそお越しくださいました。
平成15年の開設以来、芦屋市周辺の皆様のお口の健康維持のために日々診療しています。

当院は虫歯や歯周病治療などの一般歯科をはじめ、インプラント治療や入れ歯治療など歯科全般に対応します。
なかでも得意としているのは矯正歯科です。日本矯正歯科協会に所属する矯正歯科の専門医が小児矯正にも成人矯正にも対応し、インビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置)認定ドクターも在籍しています。
専門的な矯正歯科と一般歯科を並行してご提供して、総合的な口腔ケアをおこなう歯科医院です。
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