歯周病菌が子宮内膜症に関与か

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コラム

歯周病菌が子宮内膜症に関与か

令和5年7月18日の読売新聞夕刊など、各紙に報道、発表されていた記事をご紹介します。それは、歯周病の原因菌が、月経痛や不妊の原因となる「子宮内膜症」の発症に関わっている可能性があると、大学の研究チームが発表したものでした。今回は、この話題について、ご紹介します。

子宮内膜症治療法の研究

名古屋大学チームなどの研究

月経痛や不妊の原因となる子宮内膜症の発症に、歯周病の原因菌の一つである「フソバクテリウム」が関係している可能性があると、名古屋大学などの研究チームが発表しました。抗菌薬でこの細菌を取り除くことで、子宮内膜症を治療できるかもしれないという論文が米科学誌に掲載されました。

子宮内膜症について

子宮内膜症は子宮内膜に似た組織が、子宮の外側や卵巣などで増殖する病気です。初経から閉経までの月経のある女性10人の内1人が発症し、月経痛や不妊に繋がるとされています。現在、原因はまだ不明で、ホルモン剤で症状を抑える治療法がありますが、副作用などが問題となっています。
薬物療法
・鎮痛剤で痛みを抑える ・ホルモン剤やピルで痛みや出血量を軽減させる 但し、薬物療法は完治させる治療ではなく、子宮内膜症の悪化を防いだり、痛みや出血量を軽くする対症療法となっています。

研究内容

研究チームが子宮内膜症の患者42人の子宮の組織を調べたところ、本来なら無菌状態であると考えられるところに、6割越えの割合でフソバクテリウムに感染していることが確認されました。そして、子宮内膜症に罹ったマウスにフソバクテリウムを感染させると症状が悪化し、抗菌薬を投与して除菌すると症状が改善されました。
フソバクテリウム属
フソバクテリウム属は、酸素のある環境下では生育できない嫌気性の細菌で、歯垢(プラーク)や大腸などの酸素のない、あるいは極端に少ない環境で増殖し、歯周病や大腸がんなどの病気に関係しています。体内では、口腔環境や消化管、泌尿器での生存が知られています。フソバクテリウム属の中でもヌクレアタム菌は、歯垢から最も頻繁に確認され、歯周病病原菌との共同が考えられています。ヌクレアタム菌は口腔常在菌として知られ、接着性のタンパク質を有し、ヒトの上皮細胞や細菌同士の接着に関係すると報告されています。例えば、歯周病やう蝕(虫歯)は口腔細菌にヌクレアタム菌が重要な役割を果たすことによって引き起こされると考えられています。他にも、大腸がん関連細菌との間でもバイオフィルムの形成が確認されています。
発症の原因
通常は口内や腸管内にいるこのフソバクテリウムが、血流などを通じて子宮に感染すると、子宮内膜の「線維芽細胞」が、周辺組織の増殖を促す性質に変化します。これはTAGLN(タンパク質トランスジェリン)と呼ばれ、月経時に卵巣周辺に広がって、子宮内膜症の発症や進行を促進させると考えられているのです。
感染実験
TAGLNを発現する筋線維芽細胞は子宮内膜症の発症を促す性質を示します。そして、子宮内膜症の患者さんにおいて、これまでほぼ無菌状態であると考えられていた子宮内膜において、フソバクテリウムという細菌が高頻度に存在していることが発見されたのです。そこで、経腟及び血行感染により子宮内膜症のモデルマウスを作製し、フソバクテリウムの感染実験を行った結果、子宮内膜症病変の形成が促進されました。また、フソバクテリウムに有効な抗生剤を用いて治療することで、その形成を抑制できることもわかりました。 これにより、抗生剤治療が子宮内膜症の患者さんにとって非ホルモン剤投薬治療としての新規治療の道を開く可能性が出てきたのです。
現在の経過
子宮内膜症の患者さんに対し、抗生剤治療の有効性を検討するために、名古屋大学医学部附属病院産婦人科において、特定臨床研究が進められています。尚、この研究はアメリカ科学誌「Science Translational Medicine」(2023年6月14日付(アメリカ東部時間))に掲載されています。

歯周病治療の重要性

子宮内膜症は、生殖年齢の女性の約10%が罹患し、生涯にわたって骨盤痛や不妊症、がん化など、様々な問題を引き起こす疾患で、その発症メカニズムはまだ研究段階です。現在行われている治療法は、ホルモン剤内服や手術療法ですが、どちらも薬剤の副作用や術後の高い再発率が問題となっています。少子化が危ぶまれる現代において、子宮内膜症の克服は重要な課題といえます。

歯周病が全身に及ぼす影響

歯垢が歯周ポケットの中に入り込むと、歯周組織を破壊して炎症を繰り返します。その際、炎症によってでてきた毒性物質が、歯肉の血管を通じて全身に入り、様々な病気を引き起こしたり、悪化させる原因となるのです。今回取り上げた子宮内膜症にも関係するとされています。 いかがでしたか、このように、歯周病を治療することは、子宮内膜症をはじめ、全身に及ぼす様々な病気に良い影響を与えると考えられています。

監修者情報

公開日:2023年07月10日

理事長

理事長 松岡 伸輔

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