成長し続ける歯石の秘密

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コラム

成長し続ける歯石の秘密

最近では歯周病予防など、歯や歯ぐきの健康維持のために、定期的に歯科医院で「歯石取り」を行う方が増えています。でも、毎日しっかりと歯磨きをしているのに、自然とついてくる歯石を不思議に感じたことはありませんか? 今回はそのような歯石について、ご説明しましょう。

歯石とは

歯石の成分は、約70~85%のリン酸カルシウムを主体とした無機物、約7~15%の微生物の残りカスなどの有機物、約8~15%の水で成り立っています。歯石ができるには、まず歯の表面にくっ付くための足場が必要となります。その足場こそが、歯垢(プラーク)と呼ばれるものです。このプラークが唾液などによって石灰化を繰り返し、だんだん成長して歯石になっていきます。例えば、口の中に細菌が全くいない状態で育てられた実験用動物においては、歯石がほとんど見られません。ですから、人間でもプラークコントロールがしっかり行われていれば、プラーク自体がなくなるので、歯石ができにくくなるのです。

固さが異なる歯石の性質

縁上歯石
歯ぐきの状態が安定し、定期的に検診を受けている方でも、超音波振動の器具やカリカリと削り取る器具で歯石を取っていると、「歯石は固いものだなあ」と、感じるでしょうね。しかし、この時、取っている歯石のほとんどは、歯ぐきの少し上に見える白色から濃黄色の歯石です。これは歯ぐきの上にできる、比較的まだ柔らかい「縁上歯石」と呼ばれる歯石なのです。
縁下歯石
歯の歯周ポケットと呼ばれる、歯ぐきの内側の根の表面にできる「縁下歯石」は、更に取るのが大変です。歯ぐきの中の血液成分の影響で黒っぽい色をしており、歯にガッチリと付いて剥がれ難く、しかも固いという特徴があります。比較的歯周病が進行した場合によく見られ、歯ぐきの内部で炎症を起こしやすく、膿や腫れの原因となります。器具を使用しても簡単には取れないことが多く、麻酔をして歯ぐきを切開してから取ることもあります。
成長する歯石
歯石が成長し易いところは、下の前歯の裏側、上の奥歯の外側などです。ここには唾液が出る穴があり、いつも唾液中のリン酸カルシウムが吹き付けられているような状態だからです。プラークが歯石に変わっていっても、初期段階ならブラッシングで落とすことが可能です。しかしある程度の大きさまで成長すると、自分で取り去ることは難しくなり、歯科医院で機械的に取ってもらうことになります。因みに歯石の成長を自然のままに任せると、どうなると思いますか? 体質にもよるでしょうが、歯石はどんどん大きくなって、下の前歯の裏に歯冠の大きさの約16倍以上(容積比)にまで、なっているのを見たことがあります。まるで角砂糖のような歯石の塊で、歯周病が非常に進行して、結局抜歯することになりました。歯石の成長には個人差がありますが、歯石予防は歯周病予防にもつながります。その日のプラークは次の日に残さない、また、定期検診では小さいうちに歯石を取り除くことがおススメです。

歯石取りで歯茎が下がるという誤解について

「歯の根の奥まで歯石を取ったせいで歯肉が痩せ、歯の根元まで見えるようになった」という話があります。歯石除去で歯茎が下がったり、スカスカになったりすることがあるのかについて、解説しましょう。

歯石を取る理由

歯石除去が大切なのは、「歯石は歯周病の原因になるから」との回答もありますが、正確には、固くなった石のような部分は歯周病の原因ではないのです。歯垢が石灰化して固まっただけで、何の病気も引き起こしません。ただし、歯と比べて歯石の表面は、とてもでこぼこしているので、歯垢がより付き易くなっています。また、でこぼこの歯石には細菌が集まり易く、歯周病を進行させることになるのです。そのため、歯石を取ることで細菌が集まってこないようにしています。

歯石除去前後の歯肉状態の変化

歯石除去前
・進行した歯周病では、歯肉の中の根の部分まで歯石が隠れている。 ・歯を支える骨が溶けて下がっている。 ・同時に歯肉が炎症を起こし、腫れて盛り上がり、歯肉がたくさんあるように見えている。
歯石除去後
・歯石がなくなって、歯肉の炎症もなくなります。 ・ただし、歯周病で一度溶けてしまった骨は、基本的に元の形に戻ることはなく、溶けて下がったままです。 ・炎症がなくなって、溶けた骨の形に歯肉が引き締まり、健康な状態に戻ります。 つまり、歯石を取ったから歯肉が下がったのではなく、取る前に腫れていた歯肉が健康な状態に戻っただけなのです。このような勘違いは、歯石を取ったことがなくて、自分の歯肉は健康だと信じていて、実は歯周病が進行している方に起こり易いのです。 歯石があって炎症を起こしている歯ぐきは、ブラッシングなどの弱い刺激でも出血と痛みが起こります。歯石を取る時に出血しやすいと感じるのもこのためです。炎症がなくなると、出血しやすかった歯ぐきもブラッシング程度の刺激では出血しなくなります。炎症のあまりない状態で歯石除去を行えば、痛みや出血を最小限に抑えられるのです。

監修者情報

公開日:2023年07月10日

理事長

理事長 松岡 伸輔

芦屋M&S歯科・矯正クリニックのWebサイトにようこそお越しくださいました。
平成15年の開設以来、芦屋市周辺の皆様のお口の健康維持のために日々診療しています。

当院は虫歯や歯周病治療などの一般歯科をはじめ、インプラント治療や入れ歯治療など歯科全般に対応します。
なかでも得意としているのは矯正歯科です。日本矯正歯科協会に所属する矯正歯科の専門医が小児矯正にも成人矯正にも対応し、インビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置)認定ドクターも在籍しています。
専門的な矯正歯科と一般歯科を並行してご提供して、総合的な口腔ケアをおこなう歯科医院です。
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