この記事の概要は？
インビザラインは取り外して歯磨きができるから、虫歯になりにくい」 カウンセリングでそう聞いて矯正を始めたものの、ふと鏡を見たときに歯の表面が白っぽくなっていたり、冷たいものがしみたりして、「本当に大丈夫かな？」と不安になっていませんか？
実は、インビザラインには特有の「虫歯リスク」が存在します。油断していると、せっかく歯並びがきれいになっても、虫歯治療で装置を作り直す羽目になり、治療期間も費用も余計にかかってしまうことさえあるのです。
でも、安心してください。インビザラインの構造的な弱点を知り、適切な「守りのケア」を取り入れれば、虫歯は怖くありません。 この記事では、歯科医の視点から、ネット上の噂レベルではない医学的根拠に基づいたリスク管理と、忙しい毎日でも続けられる現実的なケア方法を具体的に解説します。
こちらの記事でインビザライン矯正のメリット・デメリット、向いている症例・向いていない症例について詳しく説明しています。
芦屋M&S歯科・矯正クリニック理事長の松岡です。 芦屋M&S歯科・矯正クリニックは2003年に兵庫県芦屋市で開院しました。医師全員がインビザライン治療（マウスピース治療）・小児矯正・咬合誘導で秀でています。 インビザライン治療では1年間の症例数実績によって表彰される「プラチナステータス」に公式認定されています。 このブログで、インビザラインを始めとするマウスピース矯正、ワイヤー矯正など歯並びに関するさまざまな疑問にお答えします。もし、このブログで分かりにくい点がありましたら、お気軽にお問合せください。
インビザラインは本当に虫歯になりにくい？
ワイヤー矯正と比較して「衛生的である」とされるインビザラインですが、それはあくまで「理想的な管理ができた場合」の話です。実際には、マウスピース矯正特有の環境が、かえって虫歯菌にとって好都合な条件を作ってしまうことがあります。
ワイヤーよりマシ？でも油断大敵な唾液ブロック問題
唾液には、酸を中和し、初期の虫歯を修復（再石灰化）するという強力な防御機能があります。ワイヤー矯正は器具に汚れが絡みやすいのが欠点ですが、歯の表面は常に唾液に触れています。
一方、インビザラインは歯全体をアライナーで覆います。これが唾液の供給を物理的に遮断してしまうのです。
つまり、もし汚れが残ったままマウスピースを装着すると、歯は酸性の「パック」をされたのと同じ状態になってしまいます。唾液の助けを借りられないまま、細菌のダメージをダイレクトに受け続けることになるのです。
長期治療期間のリスク
長期の治療ケースでは、虫歯のリスクが統計的に上昇することが分かっています。 特に治療期間が1年を超えてくると、どうしても初期のモチベーションが下がり、ケアが疎かになりがちです。
また、長期間にわたって唾液による保護が制限される影響が蓄積してくることも原因になります。もしあなたの治療計画が2、「攻めの予防」を意識する必要があります。
アタッチメントの周りは要注意
歯を動かすために歯の表面につける突起物アタッチメントの周囲は、ワイヤー矯正のブラケットと同じくらい汚れが溜まりやすい場所です。
マウスピースの内側にはアタッチメントがハマる窪み（ウェル）がありますが、ここを掃除し忘れる人が非常に多いのです。
汚れたままのマウスピースをはめると、細菌の塊をアタッチメント周囲に押し付け続けることになります。そして、そこから局所的に深い虫歯が発生することがあります。
アタッチメント周りは、歯ブラシを縦に当てるなどして特に念入りに磨く必要があります。
インビザライン矯正プラチナ認定の芦屋Ｍ＆Ｓ歯科・矯正クリニックのオンライン予約はこちらです。
虫歯リスクが上がってしまうNG行動パターンは？
「これくらいなら大丈夫だろう」という日常の小さな妥協が、矯正では命取りになることがあります。特に以下の3つの行動は、リスクを劇的に高めるため避けるべきです。
「ちょっとだけなら…」装着したままの甘い飲み物
「ストローを使えば大丈夫」と思っていませんか？これは大きな誤解です。
マウスピースと歯の隙間は非常に狭いため、「毛管現象（毛細管現象）」という物理現象が働きます。毛管現象により、飲み物は一瞬でマウスピースの内側全体に広がり、停滞します。
特に糖分を含むカフェラテやスポーツドリンク、酸性の炭酸飲料は危険です。砂糖水で歯をパックしているのと同じ状態になり、短時間でも脱灰（歯が溶けること）が進みます。
水以外のものを飲むときは、必ずアライナーを外すのが鉄則です。
歯磨きせずに再装着してしまう密閉培養
外出先や仕事中、どうしても歯磨きができず、食事の後にそのままマウスピースを装着してしまうことはありませんか？ 食べカスやプラーク（細菌の塊）を残したまま密閉すると、マウスピースの中は以下のような細菌にとって最高の培養器になります。
- 湿度ほぼ100%
- 適度な温度
- 豊富な栄養（糖分）
これが唾液による洗浄作用なしで数時間続くと、一気に虫歯が進行します。どうしても磨けない時は、後述する強洗口などの応急処置を必ず行いましょう。
装着時間不足による浮きが招く悪循環
「虫歯が怖いから」といって、飲食のたびに外して長時間つけ忘れるのも本末転倒です。装着時間が1日20時間を切ると、歯が計画通りに動かず、マウスピースと歯の間に「浮き」が生じます。
この隙間は新たな汚れの溜まり場となり、さらに清掃が難しくなります。
また、動きが悪くなると治療期間が延び、結果的に虫歯リスクにさらされる期間も長くなるという悪循環に陥ります。「外したらすぐ戻す」メリハリこそが、結果的に歯を守ることにつながります。
もしインビザライン矯正中に虫歯になってしまったら？
どんなに気をつけていても、虫歯になってしまうことはあります。その時、矯正治療はどうなるのでしょうか？「治療がストップするの？」「追加料金は？」という疑問にお答えします。
初期虫歯なら矯正継続OKのケースが大半
歯の表面が白く濁る程度の初期虫歯（ホワイトスポット）や、エナメル質の範囲内に留まる小さな虫歯であれば、すぐに削る必要はありません。
高濃度のフッ素を塗ったり、適切な清掃指導を受けたりしながら、矯正治療をそのまま継続できます。
むしろ、矯正を早く終わらせて環境を良くすることを優先する場合も多いです。定期検診で早期発見できれば大きなトラブルにはなりません。
削る治療が必要な場合は作り直しのリスクも
痛みが出るような中等度以上の虫歯になった場合、治療のために歯を削って詰め物をすると歯の形が微妙に変わってしまいます。 インビザラインはミクロン単位で設計されているため、詰め物の形が合わないとマウスピースが入らなくなります。
その場合、矯正を一時中断し、再度スキャンをしてマウスピースを作り直す（リファインメント）必要があります。
治療費だけじゃない？期間延長のコストを考える
多くのクリニックでは、契約期間内であればマウスピースの作り直し自体に追加費用がかかりません。しかし、契約内容によっては数万円の再診料や装置代がかかることもあります。
金銭的なコスト以上に痛いのが時間のロスです。新しいマウスピースが届くまで約1ヶ月ほど待機期間が発生し、その間も今の位置をキープするために古いマウスピースをつけ続けなければなりません。
モチベーション維持のためにも、大きな虫歯は絶対に避けるべきです。
忙しいあなたへ！外出先でもできる守りのケア術
「毎食後、完璧にフロスまでして歯磨きをする」のが理想ですが、仕事や学校でそれができない現実もあります。ここでは、現実的なラインでの守りのケアを紹介します。
歯磨きできない時の強洗口
歯ブラシが使えない状況では、次善の策として強洗口（ぶくぶくうがい）を行いましょう。水を口に含み、頬が疲れるくらい激しくゆすぎます。
マウスピース自体も水でさっと流します。
歯磨きシートも効果的
市販されている歯磨きシートを指に巻きつけて歯の表面を拭えば、ヌルつきを除去できます。
指先の感覚は繊細なので、歯の表面がツルツルになったかわかりやすいメリットもあります。
指で歯を磨く前に、まず指をきれいに洗いましょう。もし、指を使うことに抵抗がある場合はガーゼなどを指に巻いて磨いても構いません。
強洗口（ぶくぶくうがい）を併せて行ってからアライナーを装着し、帰宅後に徹底的にケアすればリスクを最小限に抑えられます。
携帯用マウスウォッシュ
多くのマウスウォッシュやスプレーは殺菌効果があるため、虫歯や歯周病の予防に役立ちます。
口の中でくちゅくちゅするマウスウォッシュや、スプレータイプのもの、タブレットなど様々な商品が市販されています。コンビニやドラッグストアでも購入できるので手軽です。
ただし、刺激の強い商品は避けてください。刺激の強い商品はエタノールが多く含まれており、口内の乾燥を招きかねません。
歯間ブラシ・フロス
歯間ブラシ・フロスは、繊維が引っかかりにくいワックス付きフロスや、奥歯にも入れやすいY字型ホルダータイプがおすすめです。アタッチメント周りの汚れも取れます。
アライナーケース
アライナーをティッシュや紙ナプキンに包んで置いておくと、間違って捨てられる事故が多発します。必ずケースに入れましょう。
どうしてもお腹が空いたら？キシリトールタブレット活用法
「マウスピースを外す暇はないけど、どうしても口寂しい」という時、糖類ゼロのキシリトール100%タブレットなら、装着したままでも食べられます（噛まずに舐めるのがコツ）。
キシリトールには虫歯菌の活動を抑える効果も期待できます。ただし、飴やグミは粘着性があり装置にくっつくのでやめておく方が無難です。
矯正中でも自宅でできる虫歯予防ケア
日々の歯磨きに加え、歯科医院レベルのケアを自宅に取り入れることで歯質そのものを強化し、酸に負けない歯を作ることができます。
高濃度フッ素ジェル
毎日の歯磨き粉は、フッ素濃度が「1450ppm」と記載されたものを選びましょう。これが国内で販売できる最高濃度です。
使い方のコツは、歯磨き後のうがいを「少量の水で1回だけ」にすること。口の中にフッ素をできるだけ残すことで、アライナー装着中に歯にフッ素を取り込ませることができます。
寝ている間も修復？MIペーストの「パック」使い
初期の白濁（ホワイトスポット）が気になる方には、「MIペースト（CPP-ACP配合ペースト）」がおすすめです。 CPP-ACP（カゼインホスホペプチド-非結晶性リン酸カルシウム）は牛乳由来のミネラル豊富なペーストで、歯の再石灰化を強力にサポートします。
寝る前にマウスピースの内側に米粒程度のMIペーストを塗り、そのまま装着して寝る「パック法」があります。寝ている間にミネラルが歯に浸透し、ダメージを修復してくれます。
ただし、歯科医師の指導のもと行ってください。また、牛乳アレルギーの方は使用できません。
まとめ
インビザライン矯正中の飲み物は水のみ、食後の汚れを口内に残さないことを意識するだけで、虫歯トラブルを劇的に減らすことができます。
外出先ではうがいやシートを活用して装着時間を守りましょう。
矯正治療は、ただ歯を並べるだけでなく、一生使える健康な歯を手に入れるためのプロセスです。正しい知識でリスクをコントロールし、美しい笑顔のゴールへ向かいましょう。
よくある質問
飲み会や食事会で長時間外す場合はどうすればいいですか？
楽しむ時は割り切って外しても大丈夫ですが、合計の装着時間が短くなりすぎないよう注意が必要です。外している間は、こまめに水で口をゆすぐか、水を飲みましょう。帰宅後はすぐに歯磨きをして装着し、もし装着時間が大幅に不足した場合は、担当医に相談してアライナーの交換時期を1〜2日遅らせるなどの調整を行うと安心です。
虫歯治療で銀歯や詰め物が変わったら、マウスピースは作り直しですか？
小さな詰め物であれば、歯科医師がマウスピースに合わせて形を調整することで、そのまま使える場合もあります。しかし、被せ物（クラウン）など大きく形が変わる場合は、基本的に作り直し（再スキャン）が必要です。虫歯治療が必要になった時点で、必ず矯正担当医と連携を取り、治療のタイミングや方法を相談してください。
マウスピース自体が臭う気がします。これも虫歯の原因になりますか？
はい、臭いは細菌繁殖のサインです。マウスピースについた見えない汚れ（バイオフィルム）が原因で、そのまま装着すると虫歯リスクが高まります。水洗いだけでなく、1日1回は専用の洗浄剤や超音波洗浄機を使って化学的に除菌することをおすすめします。歯磨き粉でゴシゴシ磨くと傷がつき、余計に菌が溜まりやすくなるので避けてください。
なぜ関西での歯並び矯正界隈で芦屋Ｍ＆Ｓ歯科・矯正クリニックが最後のとりでと呼ばれているのか？
