この記事の概要は?
自分の噛み合わせに不満や不安がありますか?歯並びや噛み合わせは、単なる見た目の問題ではなく、実は全身の健康と深く関わっています。
悪い噛み合わせ(不正咬合)は、発音の不明瞭さ、顎関節症、消化不良など、様々な問題を引き起こします。
本記事では、歯科矯正の専門家の視点から、不正咬合について詳しく解説します。不正咬合の種類や原因、健康へのリスク、そして治療法について詳しく解説します。自分や家族の噛み合わせについて理解を深め、健康的な口腔環境を手に入れるための第一歩を踏み出しましょう。
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矯正歯科医が考える正しい噛み合わせとは?
正しい噛み合わせとは、上下の歯が適切な位置に並び、機能的で安定した咬合関係を持つことを指します。矯正歯科の専門家が考える正しい噛み合わせの条件は以下の通りです。
上下顎の対称性
上顎と下顎の歯列弓(歯並びのアーチ)が左右対称で、上下の歯を噛み合わせたときの中心の線である正中線が一致している状態が理想的です。また、左右の歯の高さや幅に大きな差がないことも重要なポイントです。
前歯の適切な噛み合わせ
前歯部では、上顎前歯が下顎前歯を適度に被覆するのが正しい噛み合わせで欠かせません。いわゆるオーバージェットとオーバーバイトが適正な範囲内にあることが求められます。
オーバージェット | 前歯の前後方向の位置関係 | 2-3mmが理想 |
---|---|---|
オーバーバイト | 前歯の上下方向の重なり具合 | 2-4mmが理想 |
臼歯の安定した咬合関係
奥歯である臼歯は、咀嚼(食べ物をすりつぶす)機能の中心を担う重要な歯です。上下の臼歯が安定して噛み合い、各歯の頭の山と谷が正しくかみ合っていることが必要不可欠です。
機能的な歯の配列
歯と歯の間に隙間がなく、滑らかな歯列弓(歯並びのアーチ)を形成していることも正しい噛み合わせの条件の一つです。歯列弓上に機能的に配列された歯は、食物を適切にすりつぶし、発音や審美性にも良い影響を与えます。
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噛み合わせ自己チェック方法
日常生活の中で、自分の噛み合わせに問題がないかを確認するためのセルフチェック方法をご紹介します。ただし、これらはあくまで自己チェックの一例であり、詳細な診断には専門家の目が必要不可欠です。
正面から見た歯並びの確認
鏡の前で口を軽く開き、上下の前歯の位置関係を確認します。上の前歯が下の前歯を適度に覆っているか、上下の歯の正中線がずれていないかなどをチェックしましょう。
奥歯の噛み合わせの確認
奥歯をしっかりと噛み合わせ、左右の接触バランスを確認します。片側だけで強く噛み合わせていたり、噛み合わせた時に奥歯が浮いている感覚があったりする場合は、咬合の異常が疑われます。
歯列の連続性の確認
歯と歯の間に隙間がないか、歯列が滑らかな曲線を描いているかを確認します。歯並びの乱れや叢生、空隙歯列などは、不正咬合の典型的なサインです。
不正咬合の種類と特徴
不正咬合には様々な種類がありますが、代表的なものを以下で詳しく解説します。
乱杭歯(叢生)
叢生(そうせい)とは、歯列弓(歯並びのアーチ)のスペースに対して歯の大きさが大きすぎるために、歯が重なり合ったり捻れたりした状態を指します。乱杭歯も呼ばれることもありますし、八重歯も叢生に入ります。
ガチャ歯と呼ばれることも多いです。
上下の前歯部で発生することが多く、見た目の審美性だけでなく、虫歯や歯周病のリスクも高めます。歯ブラシが届きにくい部分ができるため、プラークが付着しやすく清掃が困難になるのです。
歯の大きさや顎骨の大きさは遺伝の影響を受けるため、親に叢生がある場合は子供も叢生を発症しやすい傾向にあります。
すきっ歯(空隙歯列)
空隙歯列(くうげきしれつ)は叢生の反対で、歯と歯の間に隙間ができる不正咬合です。俗にすきっ歯とも呼ばれます。
上下の前歯部に多く見られ、審美面での悩みとなることが少なくありません。また、発音への影響や食べカスが挟まりやすいなどの機能面での問題も生じます。
出っ歯(上顎前突)
上顎前突(じょうがくぜんとつ)は、上顎の前歯が下顎の前歯に対して前方に突出した状態を指します。いわゆる出っ歯は上顎前突に当たります。
前歯部の被蓋関係が大きすぎるため、口元の突出感が目立ち、審美面での悩みになりやすい不正咬合です。また、前歯の突き上げ癖や口唇閉鎖不全、発音の問題なども伴うことがあります。
受け口・しゃくれ(下顎前突)
下顎前突(かがくぜんとつ)は、下顎の前歯が上顎の前歯に対して前方に突出した状態で、いわゆる受け口やしゃくれと呼ばれる不正咬合です。上下の前歯が逆被蓋になるため、見た目の印象だけでなく、咀嚼(そしゃく)機能や発音、顎関節にも悪影響を及ぼすことがあります。
原因としては、下顎骨の過成長や上顎骨の劣成長が主な要因と考えられています。また、遺伝的素因の関与も指摘されており、家族内発生が比較的多い不正咬合の一つです。
早期治療が奏功しにくいケースも少なくないため、専門医による慎重な診断と治療方針の立案が求められます。
オープンバイト(開咬)
開咬(かいこう)は、前歯部で上下の歯が接触せず、開いたままの状態を指します。一般的にはオープンバイトと呼ばれます。
前歯で物を噛み切れない、舌が前に突出しやすい、発音が不明瞭になるなど、様々な機能面での障害が生じます。審美的にも、口元が閉じにくく、口唇閉鎖不全を伴うことが多いです。
骨格的な問題が背景にある場合は、外科的矯正治療が必要になることもあります。
ディープバイト(過蓋咬合)
過蓋咬合(かがいこうごう)は、前歯部で上顎の歯が下顎の歯を過度に被覆している状態を指します。オーバーバイトが深すぎるため、下顎の前歯が上顎の歯肉に接触し、歯肉の退縮や前歯の揺れ、顎関節症状などを引き起こすことがあります。
ディープバイトの治療には、顎の外科手術、バイトプレートやインビザライン(マウスピース矯正)が用いられることが多いです。
不正咬合が引き起こされる原因
不正咬合の原因は複雑かつ多様ですが、大きく分けると以下要因に分類できます。それぞれの要因について、詳しく解説していきましょう。
遺伝的要因
不正咬合の発症には、遺伝が大きく関与していると考えられています。歯の大きさや形態、顎骨の大きさや形態は、親から子へと受け継がれる傾向にあります。例えば、親に叢生や空隙歯列、上顎前突などの不正咬合がある場合、子供もそれらを発症するリスクが高くなります。
日本人は欧米人に比べて、上下の顎骨が小さめで、歯の大きさとのバランスが取れにくいことから、叢生を発症しやすい傾向にあるとされています。
乳歯の早期喪失
乳歯が虫歯や外傷などによって早期に失われると、永久歯の萌出スペースが狭くなり、永久歯の歯列不正を引き起こす可能性があります。特に、上顎前歯部や臼歯部での乳歯の早期喪失は、叢生や空隙歯列のリスクを高めます。
口呼吸や低位舌
アデノイド顔貌や慢性的な鼻炎によって口呼吸が習慣化すると、上顎骨の発育が阻害され、上顎の狭窄や前歯の突出につながることがあります。また、舌の位置が低位で前方に突出しやすい場合、前歯部の開咬を引き起こすリスクが高まります。
不適切な嚥下パターン
幼児期の嚥下(飲み込み)パターンが成長とともに成人型に移行せず、舌突出癖が残存すると、前歯部の開咬や上顎前突を招く可能性があります。また、飲み込み時に口輪筋(口の周りを円状に囲んでいる表情筋)を過剰に使う癖も、前歯部の空隙歯列や開咬のリスクを高めることが知られています。
指しゃぶりや爪噛み
指しゃぶりや爪噛みなどの癖は、前歯部の開咬や上顎前突、空隙歯列のリスクを高めます。特に、永久歯の萌出後も長期にわたって癖が継続すると、顎顔面の成長発育に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。
かたい食品の摂取不足
現代の食生活では、やわらかい食品が中心となり、かたい食品を噛む機会が減少しています。かたい食品を噛むことで、顎骨や咀嚼(そしゃく)筋の発達が促され、正しい咬合関係の形成につながります。反対に、かたい食品の摂取不足は、不正咬合のリスクを高める可能性があります。
歯の喪失や補綴物の不適合
成人期以降に歯を失うと、隣の歯が傾斜したり、反対側の歯が徐々に伸びでてくることで、咬合のバランスが崩れ、二次的な不正咬合を引き起こすことがあります。また、補綴物(かぶせ物)の不適合によって咬合の不調和が生じると、歯の移動や顎関節症状につながる恐れがあります。
急性の不正咬合の原因についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
不正咬合による健康上のリスク
不正咬合は単なる審美面の問題ではなく、様々な健康上のリスクを伴う可能性があります。ここでは、不正咬合によって引き起こされる代表的な健康問題について解説します。
発音の問題
歯の配列や咬合の異常は、発音の明瞭度に大きな影響を与えます。特に、前歯部の不正咬合は、「s」「th」「f」などの子音の発音を不明瞭にすることがあります。
例えば、上顎前突では上唇が前歯を覆いにくくなり、「s」音が歪んで聞こえることがあります。また、開咬では舌が前方に突出しやすく、「th」音の発音が困難になる場合があります。
顎関節症
不正咬合によって、上下の歯の接触関係が不適切になると、顎関節に過度の負担がかかり、顎関節症を引き起こすリスクが高まります。特に、上下の奥歯の噛み合わせが不安定な場合、片側で強く噛み締めたり、歯ぎしりをしたりすることで、顎関節の炎症や変形、関節円板の転位などを招く恐れがあります。
顎関節症は以下のような症状を引き起こします。
- 顎の痛み
- 頭痛
- 耳鳴り
消化不良
正しい噛み合わせは、食物を適切につりつぶすために不可欠です。不正咬合によって咀嚼(そしゃく)機能が低下すると、食物が十分に細かく砕かれず、消化不良を引き起こす可能性があります。
特に、奥歯の咬合異常は、咀嚼(そしゃく)効率の低下につながりやすいです。消化不良は、胃腸の不調だけでなく、栄養吸収の悪化や全身の健康状態に悪影響を及ぼすことがあります。
虫歯・歯周病
歯列の不正によって歯と歯の間に隙間ができると、食べカスが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。特に、叢生では歯ブラシが届きにくい部分ができ、プラークコントロールが困難になります。
また、不適切な咬合力の分布は、歯周組織に過度の負担をかけ、歯周病の進行を助長する可能性があります。虫歯や歯周病は、歯の喪失だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
頭痛・肩こり
不正咬合によって、顎関節や咀嚼(そしゃく)筋に過度の負担がかかると、頭痛や肩こりを引き起こすことがあります。特に、上下の前歯部で強く噛み合わせる癖がある場合、側頭部や後頭部の緊張型頭痛を招きやすいです。
また、咬合の不調和は、姿勢の悪化にもつながり、肩こりや頸部痛の原因となる可能性があります。
腰痛
咬合の異常は、全身の姿勢バランスにも影響を及ぼします。不適切な噛み合わせによって頭部が前方に位置すると、頸部や肩甲帯の筋肉に過度の緊張が生じ、背骨の湾曲が増強することがあります。
腰椎への負担が増大し、慢性的な腰痛を引き起こす恐れもあります。特に、長時間のデスクワークや運転など、同一姿勢を維持する機会が多い現代人は、注意が必要です。
顔の歪み
不正咬合は、顔貌の対称性を損ね、顔の歪みを引き起こすことがあります。例えば、片側の咬合が低下している場合、その側の咀嚼(そしゃく)筋の発達が阻害され、顔の左右差が生じる可能性があります。
また、上顎前突や下顎前突では、側貌の調和が崩れ、顔の印象が大きく変わることがあります。顔の歪みは、審美面での悩みだけでなく、心理的な負担にもつながります。
胃腸への負担
不正咬合によって食べ物をすりつぶす機能が低下すると、食物が十分に細かく砕かれず、大きな塊のまま胃に入ることがあります。これにより、胃腸に過度の負担がかかり、胃もたれや消化不良、便秘などの症状を引き起こす恐れがあります。
歯ぎしり・食いしばり
不正咬合は、歯ぎしりや食いしばりの原因となることがあります。特に、上下の奥歯の噛み合わせが不安定な場合、無意識のうちに強く噛み締めたり、横方向に滑らせたりする癖がつきやすいです。
これらの癖は、歯の摩耗や破折、顎関節症、頭痛などの様々な問題を引き起こします。
噛み合わせを改善する治療法
不正咬合の改善には、様々な治療法が用いられます。個々のケースに応じて、最適な治療法を選択することが重要です。代表的な噛み合わせの改善法について解説します。
保険適用の可能性については、基本的には自費診療となりますが、特定の先天性疾患や外傷による不正咬合の場合は、保険適用となる場合があります。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを用いて歯の移動を行う矯正治療法です。歯の表面にブラケットを接着し、そこにワイヤーを通すことで、歯に継続的な力が加わり、歯が少しずつ移動していきます。
ワイヤー矯正は、叢生や空隙歯列、上下顎の前突など、様々な不正咬合に対して高い治療効果を発揮します。装置の調整は1〜2カ月に1回のペースで行われ、治療の進捗に合わせてワイヤーの太さや形状を変更していきます。
軽度の叢生や空隙歯列の場合は比較的短期間で治療が完了する一方、重度の不正咬合や顎の骨格的な問題がある場合は、長期間の治療が必要となることがあります。
- 治療期間:2~3年程度
不正咬合の程度や治療方法によって異なります。 - 費用:60万円〜100万円ほど
口内状態により矯正費用、矯正期間の長さや通院回数などが極端に変動することがあります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なポリウレタン製のマウスピースを用いて歯の移動を行う治療法です。従来のワイヤー矯正に比べて目立ちにくく、取り外しが可能なため、ブラッシングや食事の際に便利です。また、歯の移動をコンピュータ上でシミュレーションできるため、治療のゴールが明確で、患者さんのモチベーション維持にも役立ちます。
インビザラインは米国アライン・テクノロジー社が開発した、世界的に広く用いられている代表的なマウスピース矯正のシステムです。
マウスピース矯正は、顎の骨格的な問題がある場合は適応が限られることがあります。
- 治療期間:平均して1年半〜3年程度
不正咬合の程度によっては、より長期間の治療が必要となる場合もあります。 - 費用:80万円〜100万円ほど
外科的矯正治療
重度の骨格性不正咬合の場合、歯の移動だけでは十分な改善が得られないことがあります。不正咬合が重度で矯正装置のみでは改善が困難な場合、外科的矯正治療が適応となります。
外科的矯正治療では、矯正装置による歯の移動に加えて、顎骨の外科手術を行うことで、顔面骨格の不調和を改善します。
- 治療期間:術前矯正に1〜2年、術後矯正に6カ月〜1年程度 トータル2〜3年程度
ただし、手術により一度に大きな改善が得られるため、術後の矯正期間は比較的短くなる傾向にあります。 - 費用:100万円〜300万円程度が目安
手術の内容や入院期間によって大きく異なります。
まとめ
本記事では、不正咬合の種類や原因、健康へのリスク、そして治療法について詳しく解説してきました。正しい噛み合わせは、単に見た目の問題ではなく、生涯にわたる健康の礎となるものです。自分や家族の噛み合わせに関心を持ち、セルフチェックや専門家の診断を積極的に活用することが大切です。
もし不正咬合の兆候があれば、早期発見・早期治療が何よりも重要です。治療に際しては、口腔機能の向上と全身の健康維持を目指し、専門家と相談しながら、自分に合った方法を選択しましょう。
よくある質問
不正咬合かもしれないと思ったら、どうしたらいいですか?
不正咬合の疑いがある場合は、できるだけ早めに歯科医院で診察を受けることをおすすめします。 自己判断で放置すると、症状が悪化する可能性があります。 特に、お子様の場合は、成長に伴う歯列の変化にも注意が必要です。 定期的な検診を受けることで、早期発見・早期治療につなげることができます。 歯科医院では、専門的な診断と適切なアドバイスを受けることができるので、安心して相談してみてください。
矯正治療にはどのくらいの期間がかかりますか?また、費用はどれくらいですか?
矯正治療の期間と費用は、不正咬合の種類や程度、 選択する治療法によって異なります。 一般的には、ワイヤー矯正で2〜3年、マウスピース矯正で1.5年〜3年程度と言われています。 費用は、ワイヤー矯正で60万円〜100万円、マウスピース矯正で80万円〜100万円程度が目安となります。 ただし、これはあくまで目安であり、個人差が大きいことを理解しておく必要があります。治療期間や費用については、歯科医院で具体的な治療計画を立てる際に、詳しく相談してみるのがよいでしょう。
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