インビザライン矯正ガイド

インビザラインの期間は平均どれくらい?歯科医が症例別(部分・全体)の目安、延びる原因と短縮のコツ解説

インビザライン矯正期間の平均は?短期間で済ませる3つのコツを解説

インビザラインでの矯正を検討される際、ほとんどの方が最初に気になるのは「いったい、どのくらいの期間がかかるのだろう?」という点ではないでしょうか。

「結婚式や就職といった大切なイベントまでに間に合わせたい」「ワイヤー矯正より早いと聞いたけれど本当?」「治療が長引いて、費用もかさんだらでどうしよう…」1 といった不安や疑問をお持ちのことと思います。

この記事では、皆様の疑問に、インビザライン治療に多く携わる歯科医師が正直にお答えします。平均的な目安はもちろん、なぜ人によって期間が違うのか、そして皆様が最も心配される「治療が延びる本当の理由」1 や、治療を最短で終えるためのコツまで詳しく解説します。

インビザラインに向いている人・不向きの人、施術の流れ、気になる費用については以下の記事をご覧ください。

芦屋M&S歯科・矯正クリニック理事長 松岡伸輔

芦屋M&S歯科・矯正クリニック理事長の松岡です。

芦屋M&S歯科・矯正クリニックは2003年に兵庫県芦屋市で開院しました。医師全員がインビザライン治療(マウスピース治療)・小児矯正・咬合誘導で秀でています

インビザライン治療では1年間の症例数実績によって表彰される「プラチナステータス」に公式認定されています。

このブログで、インビザラインを始めとするマウスピース矯正、ワイヤー矯正など歯並びに関するさまざまな疑問にお答えします。もし、このブログで分かりにくい点がありましたら、お気軽にお問合せください。

インビザライン矯正の期間は?

インビザライン矯正の期間は?

インビザライン矯正の期間は平均して1年半から3年程度です。矯正する箇所の歯並び状態や本数によって異なります。

ただし、「前歯のすき間だけ」「下の前歯のガタガタだけ」といった、比較的軽度な症例を対象とする部分矯正で済む場合、治療期間は大幅に短くなります。

目安としては1年程度 で完了することが多いです。

ただし、インビザラインにも部分矯正専用のプランはありますが、適応できる症例はかなり限定されます。見た目だけを整えても、噛み合わせに問題が残ってしまっては長期的に見て健康とは言えません。

ご自身の希望と、医学的に必要な治療のバランスを歯科医師としっかり相談することが重要です。

インビザラインとワイヤー矯正どっちが早い?

矯正に2〜3年かかる従来のワイヤー矯正と比べて、同期間か少し短いくらいの治療期間で終わります。

インビザラインは、治療開始前に全ての歯の動きをデジタルシミュレーションで計画します。そのため、歯全体を同時に、あるいは無駄のない順序で効率よく動かすことが得意です。

ワイヤー矯正のように「まずAを動かして、次にBを動かす」といった段階的な動きが少ないため、結果としてトータル期間が短縮されやすいのです。

日本アライナー矯正歯科研究会でも以下のように説明されています。

コンピューターによる矯正移動シミュレーションは全世界200万人以上の過去の矯正臨床データを分析して、一人一人に合った治療計画を立てます。
正確かつ無駄な動きがないため、目標となる歯の位置まで最短距離で歯を動かすことができます。 そのためトータルの治療期間は従来の装置とほとんど変わらないか、 症例によっては早くなる場合もあるのです。

引用:日本アライナー矯正歯科研究会「進化し続けるアライナー型矯正システム」

しかも、インビザライン矯正はマウスピース装着時の痛みや違和感が少なく、矯正中もより快適に過ごせます。

ちなみに、インビザライン以外のマウスピース矯正ブランドは矯正シミュレーションの精度がまだまだ低く、インビザラインと比べると期間予想が困難です。

なぜ(インビザラインに限らず)歯列矯正は時間が必要?

なぜ(インビザラインに限らず)歯列矯正は時間が必要?

歯列矯正はどうしてこんなに時間がかかるのでしょうか?

インビザラインはマウスピースで少しずつ歯を移動

インビザライン矯正は、複数のマウスピースを段階的に使って歯を動かしていきます。マウスピース1枚で動かせる歯の距離は最大でも0.25mmほどです。

インビザラインで使うマウスピースの平均枚数については以下の記事で詳しく説明しています。

マウスピースは約10日〜2週間に1度の頻度で取り替えます。歯を1mm動かすのに2ヶ月程度かかることになります。

それ以上大きく動かすために力を加えすぎると、マウスピースが破損しかねません。そうなると、歯を支える骨や歯茎、神経まで傷つけ治療を長引かせることになるでしょう。

安全にしっかり歯を動かすためには、長い時間が必要であることを理解しましょう。インビザラインで変化をいつから実感できるかについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

【重要】治療期間の後に「保定期間」が必ず必要

アライナー(マウスピース)を装着して歯を動かす期間(=動的治療)が終わっても、それで「矯正完了」ではありません。

治療が終わってキレイに歯が並んだら、歯をリテーナーと呼ばれる保定装置で固定していきます。リテーナーの装着時間は、初めの2年ほどは食事•歯磨き以外の時間は常に装着していただきます。

歯は、動かした後も元の位置に戻ろうとする「後戻り」という性質を持っています。この後戻りを防ぎ、キレイになった歯並びをその位置で安定させるために保定期間が絶対に必要になります。

この保定期間の目安は、一般的に「歯を動かした治療期間と同じくらいの期間」(例えば、治療に2年かかったら、保定も2年)が推奨されます。

その後は寝る時のみなど、徐々に減らしてもかまいません。

つまり、「トータルの矯正期間」とは、「歯を動かす期間」+「歯を固定する保定期間」で考える必要があるのです。これを怠ると、せっかく時間と費用をかけて治療した後悔にも繋がりかねません。

どんな場合に矯正治療期間が通常より長くなる?

こんな人は矯正治療期間が通常より長くなるかも

以下の理由でインビザライン矯正の期間が長引く場合があります。

  • マウスピースの装着時間が守れない(1日22時間以上)
  • 抜歯が必要
  • 歯並びが極端にデコボコ
  • マウスピースを紛失した
  • 治療中に虫歯や歯周病が発生した
  • リファインメントによる微修正

マウスピースの装着時間が守れない

マウスピースの装着時間が短すぎると、インビザライン治療が大幅に延びる原因となります。これが、治療期間が延びる(あるいは治療が失敗する)最大の原因です。

マウスピースの着け忘れは誰にでもありますが、度重なる場合は要注意です。

インビザライン矯正では、複数のマウスピースを段階的に使用します。仮に1日でも着け忘れがあると、スケジュール通りに歯が動きません。

次のマウスピースに交換する際、痛みや違和感が出る場合もあります。最悪の場合、新しいマウスピースが「浮いてしまって入らない」状態になり、1から作り直しになりかねません。

1日20時間以上の装着時間を決め、それを習慣化しましょう。

抜歯が必要

抜歯をして歯並びに抜けがある場合、通常より治療期間が長くなります。抜いた歯のスペースを埋めるため、残った歯を余分に動かす必要があるからです。

歯並びがガタガタ(叢生)な場合や口元が突出している出っ歯(上顎前突)の場合、歯をキレイに並べるためのスペースを確保するために抜歯が必要となることがあります。

抜歯をすると、歯1本分の大きなスペースができます。そのスペースを利用して歯を大きく移動させるため、歯の移動距離が長くなり、治療期間は必然的に長くなります。

抜歯を伴う場合は、2年以上かかるケースが多いと理解しておくとよいでしょう。

さらに、抜歯箇所が複数個所ある場合は、インビザライン矯正だけでは対応できない可能性もあります。また、歯並び矯正をするにあたって抜歯が必要なこともあります。

ワイヤー矯正などを併用した治療も可能なので矯正歯科医に相談してみましょう。

歯並びが極端にデコボコの場合

デコボコ歯並び(叢生)の度合いがきつい場合も、インビザライン矯正の期間が通常より長くなります。歯が大幅にずれているので、理想の位置に動かすのには時間がかかります。

ずれ具合によりますが、歯を並べるスペースがないと抜歯も必要になるでしょう。重度の叢生の場合インビザライン矯正が適応にならないこともあります。

まずは信頼できる矯正歯科医に相談してみましょう。

マウスピースを紛失した

マウスピースの紛失も、インビザライン矯正期間を大幅に延ばす原因になります。外食の際に、マウスピースを外した後そのままお店に忘れてしまう方も多いようです。

紛失による未装着の時間ができると、計画通り歯の移動ができず治療期間を延ばします。最悪の場合、マウスピースを新しく作り直しもう一度治療をやり直すことにもなりかねません。

紛失に気づいたらすぐに主治医の先生に連絡しましょう。何よりも紛失しないよう細心の注意を払いましょう。

治療中に虫歯や歯周病が発生したから

インビザライン矯正中に口内トラブルが発生すると、治療期間が延びることがあります。

  • 虫歯
  • 歯周病
  • 詰め物やかぶせ物のやりかえ

上記の治療により、マウスピースを装着できなくなり口内環境が大きく変わるかもしれません。

インビザラインの治療中は、アライナーで歯が覆われている時間が長くなるため、口腔ケアを怠ると虫歯や歯周病のリスクが高まります。

もし矯正治療中に虫歯や歯周病が見つかった場合、矯正治療を一時中断し、そちらの治療を優先しなければなりません。当然、その間は矯正が進まないため、トータルの期間が延びてしまいます。

無事に治療が終わっても、再び同じマウスピースを使用できない可能性も出てきます。その場合は、改めて型取りをするので治療工程のやり直しが必要となるでしょう。

リファインメントによる微修正

リファインメントとは、以下のような場合に再度治療計画を立て、追加でマウスピースを作成する工程です。

  • 当初の計画とは歯の動きが異なる
  • 歯の並びを修正する必要が出た

患者様が装着時間をしっかり守り、治療が順調に進んだとしても、治療の最終段階で「シミュレーション通りの完璧な歯並び」と「実際の歯並び」の間にわずかなズレが生じることがあります。

これは人間の身体を扱う医療である以上、歯の動き方の個人差などで起こり得ることです。

インビザライン矯正をする8割以上の患者が、大なり小なり、リファインメントを必要とします。マウスピースの数ミリの誤差を修正し、最終的に目標とする歯並びになるよう矯正を進めます。

これは「治療の失敗」ではなく、より良い結果を追求するために必要な「治療の品質管理プロセス」とご理解ください。

このリファインメント(追加アライナーの製造・輸送・装着)のために、数ヶ月程度の追加期間が必要になることはインビザライン治療では珍しくありません。

芦屋M&S歯科・矯正クリニックではリファインメントは当初の治療費用に含まれます。

インビザライン矯正を短期間で終わらせる5つのコツ

インビザライン矯正を短期間で終わらせる3つのコツ

インビザライン矯正を短期間で終わらせるコツをご紹介します。

  • インビザライン経験の豊富な歯科医を選ぶ
  • マウスピースを決められた時間装着する
  • 調整のためにきちんと定期通院する
  • 口内ケアとマウスピース洗浄を怠らない
  • 加速矯正装置を使う

インビザライン経験の豊富な歯科医を選ぶ

実は、これが期間を管理する上で最も重要な要素かもしれません。

インビザライン治療は、どの歯科医院で受けても同じ結果、同じ期間になるわけではありません。なぜなら、治療の「設計図(シミュレーション)」を作るのは、最終的に担当する歯科医師の知識と経験だからです。

経験豊富な歯科医師は、歯の動きを正確に予測し、無理のない、しかし効率的な「精度の高い治療計画」を立案できます。

計画の精度が高いということは、シミュレーションと実際の動きとのズレが少ない、ということです。

つまり、「医師の技術」こそが、無駄な延長(リファインメント)を防ぎ、トータルの治療期間を最短にすることに直結するのです。

インビザラインには、症例数に応じてステータスがメーカーから付与されています。こういったステータスも医院選びの一つの参考になるでしょう。

芦屋M&S歯科・矯正クリニックはインビザラインの治療実績が認められ「プラチナエリート・プロバイダー」という認定を受けています。

マウスピースを決められた時間装着する

治療が計画通りに進むために、マウスピースは一日20時間以上装着しなければなりません。マウスピースは自分で取り外せるのがメリットです。

でも再装着を忘れると一日の装着時間を確保できなくなります。毎日決められた時間にマウスピースを装着できるよう、自己管理をしてください。

マウスピースを所定の場所に保管することで、定時の装着と着け忘れの防止にもつながります。

口内ケアとマウスピース洗浄を怠らない

矯正期間中は、口内ケアとマウスピースを洗浄し清潔に保ちましょう。インビザラインを外して飲食するよう心がけてください。

マウスピースを着けたまま飲食できるものについては以下の記事で詳しく説明しています。

食後は歯磨きに加え、歯間ブラシなどで口内ケアをしましょう。マウスピースは洗浄してから装着しましょう。

口内を清潔に保つことで、虫歯や歯周病を防ぐことができます。通院の際、歯ブラシや磨き方の指導を受けることもお勧めします。

マウスピースを清潔に保つための正しい洗浄方法をこちらで説明しています。

調整のためにきちんと定期通院する

インビザライン矯正では、1ヶ月半から2ヶ月ごとに歯の動きを確認し調整します。

歯の動きが治療計画通りでないと、追加のアタッチメントやマウスピースが必要になることがあります。

でも早期であれば追加の治療期間も短くて済みます。定期検診の際、虫歯の有無なども確認できるでしょう。

定期的な検診の日付をカレンダーに記入し、忘れずに通院しましょう。

加速矯正装置を使う

光加速装置や振動加速装置といった、歯の動きを早めるとされる装置が存在します。

効果が出やすい人、出にくい人の個人差はありますが、治療期間が短縮される可能性は大きいです。

ただし、もともとの治療期間が短い軽微な症例の方や、費用を最優先される方には、あまりお勧めできないかもしれません 。まずは基本である「装着時間」をしっかり守る方が重要です。

まとめ

インビザライン矯正は、平均1年半から3年程度で理想の歯並びを実現できる治療法です。ただし、お一人おひとりの歯並びの状態や生活習慣によって、より適切な治療方法や期間が異なることもあります。

まずは経験豊富な矯正歯科専門医による診断を受け、ご自身の状態に合った治療計画についてご相談されることをお勧めします。詳しい診断と丁寧な説明を受けることで、より安心して治療をスタートすることができます。

よくある質問

インビザライン矯正は従来のワイヤー矯正より治療期間が短いですか?

インビザライン矯正の標準的な治療期間は1年半から3年程度で、従来のワイヤー矯正(2~3年)と同程度か、場合によってはやや短くなります。ただし、個々の歯並びの状態によって期間は変動します。また、マウスピースの装着時間を守ることで、より確実に治療を進めることができます。

リテーナー(保定装置)はどのくらいの期間つける必要がありますか?

リテーナーは最初の2年程度は食事・歯磨き以外の時間に常時装着が推奨されます。その後は就寝時のみなど、徐々に装着時間を減らすことができます。ただし、歯並びの安定度合いによって個人差がありますので、担当医の指示に従って装着期間を調整していくことが大切です。

インビザラインの治療期間が延びる一番の原因は何ですか?

最も多い原因は、患者様ご自身がアライナー(マウスピース)の装着時間を守れないことです。インビザラインは1日20~22時間以上の装着が必須で、これが守れないと歯が計画通りに動かず、治療が延長したり、計画の作り直しが必要になったりします。

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