この記事の概要は?
「インビザラインは痛いですか?」これは、矯正治療を検討されている方がカウンセリングで最も多く口にされる質問の一つです。
美しい歯並びを手に入れたいけれど、治療中の痛みが怖くて一歩を踏み出せない、という方は少なくありません。
結論からお伝えすると、インビザライン治療では多少の痛みや違和感を感じることがありますが、多くの場合、それは歯が正しく動いている証拠です。そして重要なのは、その痛みが従来のワイヤー矯正と比較して大幅に少なく、ご自身で適切に対処できるということです。
この記事では、インビザライン矯正の専門家として、あなたが抱える「痛み」への不安を完全に解消することを目指します。なぜ痛みを感じるのか、その根本的な原因から、痛みのピークはいつで、いつまで続くのかという具体的なタイムライン、そして今日から実践できるセルフケア大全まで解説します。
なぜインビザライン矯正は痛みが少ないのか?
インビザライン矯正は、従来のワイヤー矯正などの他の矯正方法と比べて痛みは少ないとされています。もともとが、ワイヤー矯正を受けてあまりの痛さや不快感に辟易した学生が、マウスピースを本格的な歯並び矯正に活用しようと開発したのがインビザラインの始まりです。
と言っても、インビザライン矯正は痛みが全くない治療法ではありません。どの矯正法であっても、歯を正しい位置に移動させるため力をかけるからです。
それでも、インビザラインが他の矯正法に比べて痛みが少ないのには理由があります。
痛み以外にも、インビザラインをおすすめしないケースを以下の記事で説明しています。
インビザラインが痛みが少ないのは歯を動かす仕組みによる
インビザラインが他の矯正よりも痛みが少ない理由は、その矯正の仕組みにあります。インビザライン矯正では、以下のように歯をゆっくりと動かし矯正していきます。
- 1週間〜2週間ごとにマウスピースを交換する
- 1つのマウスピースで0.25mmずつ歯を動かす
- 1ヶ月ごとに歯を0.5mm〜1mmずつ動かす
一方、ワイヤー矯正は1ヶ月ごとに歯を1mm〜2mm動かし矯正します。インビザライン矯正の倍以上の移動量です。
それだけ動かすためには、歯を引っ張る力も強くかけなければなりません。
インビザラインは同じ矯正時間で、ワイヤー矯正よりもゆっくりと歯を動かします。歯を移動する際にかかる力が緩やかなので、感じる痛みも軽減されるのです。
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インビザラインで痛みを感じる9つの主な原因
インビザライン治療で感じる痛みや違和感には、必ず原因があります。その正体を理解することが、不安を解消する第一歩です。実は、インビザラインの痛みには大きく分けて2つの種類があります。
一つは、歯が計画通りに動いている証拠ともいえる「正常な過程で起こる痛み」。
もう一つは、装置の不具合や使い方など、少しの工夫や調整で解決できる「対処可能な痛み」です。それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。
インビザラインを含む歯列矯正一般で経験し得る痛みの種類について以下の記事で説明しています。
歯が動く際の生理的な痛み(歯根膜の反応)
これが、矯正治療における痛みの最も根本的な原因です。マウスピース(アライナー)が歯に持続的で穏やかな力を加えると、歯の根を支えている「歯根膜(しこんまく)」という薄いクッションのような組織が片側で縮み、反対側で引き伸ばされます。
この刺激がきっかけとなり、骨を溶かす細胞と新しく骨を作る細胞が働き始めます。この骨の再構築(リモデリング)の過程で、痛みを感じさせる物質が放出されるため、歯全体がじーんとするような、あるいは鈍い痛みを感じるのです。
これは、歯が計画通りに動いている何よりの証拠であり、いわば「良い痛み」と言えるでしょう。
新しいアライナーへの交換による圧迫感
インビザライン治療では、1〜2週間ごとに新しいアライナーに交換していきます。新しいアライナーは、現在の歯並びよりも少しだけ未来の(理想の)歯並びの形に作られています。そのため、交換した直後は歯全体が締め付けられるような強い圧迫感を感じます。
これが、インビザライン治療中に最も頻繁に経験する痛みや違和感の正体です。しかし、この圧迫感は、歯が新しいアライナーの形に合わせて動くにつれて、数日で自然と和らいでいきます。
アタッチメントによる口内への刺激
アタッチメントとは、歯の表面に接着する、歯と同じ色の小さな樹脂製の突起のことです。これは、アライナーが歯をしっかりと掴み、回転させたり傾けたりといった複雑な動きを可能にするための重要な「取っ手」の役割を果たします。
アタッチメントが原因で起こる痛みには2種類あります。
一つは、アライナー装着時に、歯にかかる力をより効率的にするため圧迫感が強まることです。
もう一つは、食事などでアライナーを外している時に、この突起が頬の内側や唇の裏側に擦れてしまったときに違和感や痛み、時には口内炎を引き起こすことです。
アライナーの縁(ふち)が歯茎や舌に当たる
インビザラインのアライナーは滑らかに作られていますが、ごく稀に、製造過程でのわずかなズレや個々人の歯茎の形によって、アライナーの縁が歯茎や舌に当たってチクチクとした痛みを感じることがあります。
これは歯が動く痛みとは異なる、物理的な刺激によるものです。このような場合はご自身で解決しようとせず、歯科医院で調整してもらうことで簡単に解決できます。
顎間ゴム(ゴムかけ)による追加の力
上の歯と下の歯の噛み合わせを正しく整えるために、「顎間ゴム」と呼ばれる小さな医療用のゴムを上下のアライナーやアタッチメントに引っ掛けて使うことがあります。このゴムかけは、アライナーだけでは難しい、前後や上下の歯の動きをコントロールするために行います。
アライナーの力に加えてゴムの引っ張る力が加わるため、これまでとは異なる方向からの力を感じ、痛みや違和感が生じることがあります。
装着時間が不足した後の再装着
これは、自己管理が治療結果に直結するインビザラインならではの痛みの原因です。インビザラインは1日20〜22時間以上の装着が推奨されています。この時間を守れず、長時間アライナーを外してしまうと歯は元の位置に少し戻ろうとします(後戻り)。
その状態でアライナーを再び装着すると、後戻りしようとする力に抵抗して無理やり歯を動かすことになるため非常に強い痛みを感じることがあります。この痛みは、装着時間を守ることで避けられる痛みです。
IPR処置による痛み
IPRは、歯を移動させる空間を作り出すために歯を削る処置です。歯と歯の間をヤスリで0.2mmほど削ります。
ごくまれに、削った後染みるような痛みを感じる人がおられるようです。
そのような場合、「染み止め」薬剤の塗布で対処できるでしょう。
芦屋M&S歯科・矯正クリニックでは今までにIPRの処置後に染みる症状を訴えてきた患者さんはおられません。
食事(咀嚼)による歯根膜への刺激
アライナーを外して食事をする時でも、痛みを感じることがあります。これは、常に矯正力がかかっていることで、歯の根の周りにある歯根膜が敏感になっているためです。
その状態でリンゴやおせんべいのような硬いものを噛むと、敏感な歯根膜が刺激され一時的に痛みを感じることがあります。これは歯に異常があるわけではなく、矯正中の正常な反応です。
マウスピースを着け外しする痛み
マウスピースを着け外しする際に、痛みを感じることがあります。着脱に慣れるまでは、余分な力が歯にかかり痛みを感じるかもしれません。
矯正の痛みのピークはいつ?期間とタイミング

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痛みの原因がわかっても、次に気になるのは「その痛みは、いつまで続くのか?」という点でしょう。
治療開始直後(最初の1週間):最初のピーク
インビザライン治療で最も違和感や痛みを感じやすいのは、治療を開始してからの最初の3日間から1週間です。これは、お口の中に初めて異物(アライナー)が入り、歯が初めて矯正力を受けるため、体がその新しい環境に適応しようとする期間だからです。
多くの方がこの最初の山を越えると、その後の治療にスムーズに慣れていきます。
アライナー交換後の2~3日間:定期的なピーク
治療が始まると、定期的に痛みの小さな波がやってきます。それは、新しいアライナーに交換した直後の24時間から72時間(2〜3日間)です。特に交換初日が痛みのピークで、歯が新しいアライナーの形に馴染むにつれて、痛みは急速に薄れていきます。
この痛みのサイクルは予測可能です。ですから、例えば週末前の金曜の夜寝る前に新しいアライナーに交換するという工夫ができます。
そうすれば、痛みのピークを比較的リラックスして過ごせる週末や睡眠中に乗り越えることができ、仕事や学業への影響を最小限に抑えられます。このように、痛みのパターンを理解し、生活に合わせて能動的に管理できる点はインビザラインの大きな利点です。
痛みはいつ「慣れる」のか?
ほとんどの患者さんは、治療開始から1〜3週間もすれば、この定期的な痛みのサイクルに慣れてきます。最初は不安だった「痛み」が、歯が動いていることを実感できる「いつもの感覚」へと変わっていくのです。
また、治療が進み、大きな歯の移動が完了してくると、アライナー交換時の痛みの度合いも徐々に軽くなっていく傾向があります。
インビザラインで痛みを少なくする方法
インビザラインで痛みが治まらない場合は、以下の方法で対策をしてください。
柔らかい食事を摂る
痛みが強いときは、歯根膜が敏感になっています。おかゆやヨーグルト、スープ、スムージー、よく煮込んだうどんなど、あまり噛まなくても食べられる柔らかい食事を心がけましょう。
硬いものを避けるだけで、食事中の不快な刺激を大きく減らすことができます。
痛み止めを処方してもらう
痛みを感じたら、我慢せずに痛み止めを飲んでください。痛み止めは、歯科医が処方するものもあります。
もし手元に痛み止めがなければ、市販の鎮痛剤でも大丈夫です。鎮痛剤を服用しても、痛みが軽減しないこともあるかもしれません。
虫歯や他の原因の可能性もあるので、早めに歯科医に相談しましょう。
患部を冷やす
痛みや炎症がある部分の頬の外側から冷たいタオルや保冷剤を軽く当てることで、感覚が和らぎ楽になることがあります。冷たい水を口に含むのも効果的です。
ただし、氷を直接歯に当てるなど、急激に冷やしすぎるのは避けましょう。
一つ前のマウスピースに戻す
交換後のマウスピースに慣れるまでは、痛みや違和感が強く出る場合があります。対策として、一つ前のマウスピースに戻してみましょう。
新しいマウスピースへ交換した時は、それまでとは違う矯正力が歯にかかるからです。
一つ前のマウスピースを数日着用してから、次のものに交換してみましょう。
この対策により、痛みをあまり感じなくなったケースもあります。
アライナーリムーバーなどの専用器具を使ってみる
マウスピースの着脱時にどうしても痛みを感じる場合は、アライナーリムーバーなどの専用器具があります。
専用器具の代わりに、薄くて先の小さいスプーンを使うこともできます。
ただし、手元に手ごろな器具が何もない場合も多いでしょう。ですから、できるだけ道具を使わずにマウスピースを着脱できるようになることをお勧めします。
芦屋M&S歯科・矯正クリニックでは、インビザライン装着の初回時に着脱の練習を実際にしていただきます。
どうしても上手に着脱できないとか、爪が長いので着脱が困難な方にはアライナーリムーバーを販売しておりますのでご相談ください。
チューイーの使用
「チューイー」は、アライナーを歯にしっかりとフィットさせるためのシリコン製のロールです。これを噛むことでアライナーの浮き上がりがなくなり、矯正力が計画通りに歯に伝わります。
アライナーが正しく装着されていないと、不必要な痛みや治療の遅れの原因になるため、特に交換直後はチューイーを使ってしっかり装着させることが重要です。痛みを和らげるためではなく、痛みの原因を作らないためのツールと理解しましょう。
矯正用ワックス
アタッチメントやアライナーの縁が頬の粘膜に当たって痛い場合に非常に有効です。ワックスを少量ちぎって丸め、気になる部分に貼り付けることで粘膜を保護するクッションになります。
飲み込んでしまっても体に害のない安全な素材でできています。
歯科医に相談する
以下のような症状が見られた場合は、次の予約を待たずに、すぐに歯科医院へ連絡してください。
- 我慢できないほどの鋭い、持続的な痛み: じーんとする鈍い痛みではなく、ズキズキと脈打つような鋭い痛みが3〜4日以上続く
- 特定の歯だけに限定された激しい痛み: もし1本の歯だけが突出して激しく痛む場合、その歯に虫歯や歯の神経の問題、歯周病などが隠れている可能性
- アライナーが破損・変形している
- 歯茎の著しい腫れや出血: 明らかに腫れ上がっている、頻繁に出血するといった症状は歯周病の悪化やアライナーが歯茎を強く圧迫しすぎているサインかも
これらのサインに気づいたら、「これくらいで連絡していいのかな?」とためらう必要は一切ありません。
歯科でマウスピースを調整したり、ワイヤー矯正など他の矯正法との併用も考えてくれます。矯正処置以外から来る虫歯などの原因も見つかるかもしれません。
痛みが長く続く場合は、早めに歯科医に相談しましょう。
逆効果かも?インビザライン矯正で痛いときのNG対処法
良かれと思ってやったことが、実は治療の妨げになっているケースもあります。以下の点は特に注意してください。
自己判断でアライナーを削る
アライナーの縁が当たって痛い場合、自分でヤスリなどで削ろうとするのは絶対にやめましょう。アライナーは精密に設計されており、わずかな変形でも計画通りに歯が動かなくなる可能性があります。
必ず歯科医院に持参し、専門家による調整を受けてください。
痛いからと装着時間を短くする
痛みを和らげるためにアライナーを外す時間を長くすることは、最もやってはいけない対処法です。歯が後戻りを起こし、再装着時にさらに強い痛みを感じるだけでなく、治療計画が台無しになり、治療期間の延長や追加費用につながる可能性があります。
まとめ
インビザラインは、少しずつ歯を移動させるので多少の痛みを感じることがあります。それでも、ワイヤー矯正など他の矯正法よりも少ない痛みで治療できます。
ほとんどの場合には回避法があり、痛みを軽減・緩和できます。
耐えがたく感じる痛みがしばらく続く場合は、早めに歯科医に相談しましょう。
インビザライン矯正の実績が豊富な矯正歯科医であれば、痛みを抑えつつきちんと治療を終えるようサポートしてくれます。
痛みに関するさらなる疑問や、あなたご自身の歯並びに関するお悩みがあれば、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。
私たちが、あなたの状況に合わせた、最も快適で安心できる治療の道を一緒に考えます。
よくある質問
インビザラインの痛みのピークはいつで、いつまで続きますか?
痛みのピークは主に2回あります。1回目は治療を開始した最初の3日〜1週間です。2回目は、新しいマウスピース(アライナー)に交換した後の1〜3日間です。この痛みは歯が新しい位置へ動いている証拠で、ほとんどの場合、数日経てば自然に和らぎます。治療開始から数週間で、多くの方がこの感覚に慣れてきます。
痛みが我慢できない時はどうすればいいですか?
まずは市販の鎮痛剤(アセトアミノフェン系が推奨されます)を服用してみてください。また、痛む部分の頬を冷たいタオルで冷やしたり、食事をスープやヨーグルトなど柔らかいものにしたりするのも効果的です。それでも痛みが3日以上続く場合や、日常生活に支障が出るほど強い場合は、我慢せずに担当の歯科医師に相談してください。
痛み止めを飲んでも大丈夫ですか?歯の動きに影響はありませんか?
はい、痛み止めを服用しても問題ありません。痛みが強い場合は、無理せず適切に薬を使いましょう。
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