この記事の概要は?
「自分のガタガタな歯並びは、本当にインビザラインで治せるんだろうか…」「もしかしたら、自分の叢生は重度だから、金属のワイヤー矯正じゃないと無理かもしれない」。
長年、歯並びにコンプレックスを抱え、いざ矯正治療を考え始めたとき、多くの方がこのような不安に直面します。かつては「重度の叢生にはワイヤー矯正」が常識でしたが、その常識はもはや過去のものです。
この記事では、歯科医として、叢生(そうせい)でお悩みの方々が抱える疑問に正面からお答えします。
インビザラインの技術がどれほど進化し、現在ではどの程度の叢生まで対応可能になっているのか。そして、治療を成功に導くために本当に大切なことは何かを専門的な視点から徹底的に解説します。
こちらの記事でインビザライン矯正のメリット・デメリット、向いている症例・向いていない症例について詳しく説明しています。
なぜ重度の叢生もインビザラインで矯正できるようになったか?
ガタガタの歯をきれいに並べるためには、まず歯が並ぶための「場所(スペース)」を作り出す必要があります。
インビザラインでは、主に以下の3つの方法を組み合わせ、お口の状態に合わせて最適なスペース確保を行います。
IPR(歯間削合)
IPRとは、歯と歯の隣接面のエナメル質を、ヤスリのような器具でわずかに削る処置です。削ると聞くと不安に思うかもしれません。
しかし、削るのは歯の最も外側にある厚いエナメル質の0.2mm〜0.5mm程度だけです。神経のない部分なので痛みはなく、虫歯になりやすくなる心配もありません。
このわずかなスペースを歯列全体で複数箇所に作ることで、数ミリ単位のスペースを生み出すことができます。軽度から中等度の叢生を解消したり、歯ぐきの隙間(ブラックトライアングル)を防いだりするのに非常に有効な方法です。
抜歯
「インビザラインは歯を抜かない治療」という情報は、もはや過去のものです。
歯が並ぶためのスペースが圧倒的に不足している重度の叢生(目安として10mm以上の重なり)の場合、健康な歯を抜いて大きなスペースを作ることが最良の結果につながる場合があります。
抜歯によってできた大きなスペースを閉じるように、歯をダイナミックに動かすことが可能です。
特に、口元の突出感(口ゴボ)も同時に改善したい場合、抜歯は歯並びだけでなく、顔全体の印象を美しく整えるための極めて有効な選択肢となります。
アタッチメント
アタッチメントとは、歯の表面に一時的に接着する歯とほぼ同じ色の樹脂でできた小さな突起です。
これは、マウスピースが歯をしっかりと掴み、的確な力を加えるための「ハンドル」のような役割を果たします。特に、ねじれが強い歯を回転させたり、歯を引っ張り出したりといった複雑な動きにはアタッチメントが不可欠です。
ワイヤー矯正におけるブラケットと同じ役割を担う、治療の精度を高めるための重要な装置なのです。治療が完了すれば、跡形もなくきれいに除去します。
関西随一の実力派プラチナ認定医芦屋M&S歯科・矯正クリニックに歯並び矯正をお気軽にご相談ください。
あなたの叢生はどのレベル?重症度のセルフチェック目安
ご自身の叢生がどの程度のレベルなのか、気になりますね。もちろん正確な診断は専門医による精密検査が必要ですが、一般的な目安を知っておくことで治療への理解が深まります。
重症度 | 状態 | 歯の重なり具合の目安 | 治療の一般的な方針 |
---|---|---|---|
軽度 | 前歯が少しだけ重なっていたり、わずかにねじれていたりする | 4mm未満 | 歯を抜かずにインビザラインで治療が可能 |
中等度 | 歯の重なりが大きく、犬歯が飛び出している「八重歯」など | 5mm〜9mm程度 | 抜歯が必要になるかどうかのボーダーライン 近年のインビザラインでは多くが治療対象 |
重度 | 歯列全体にわたって歯が大きく重なり、著しくガタガタしている | 10mm以上 | かつてはワイヤー矯正が必須 経験豊富な歯科医であればインビザラインで治療できるケースが増えている |
ご自身で「これは重度かも…」と感じていても、専門医の診断では「治療可能な中等度」と判断されることも少なくありません。
自己判断で諦めてしまう前に、まずは正確な診断を受けることが何よりも大切です。
ワイヤー矯正が適しているケースとは?
インビザラインが万能ではないことにも触れておきます。
例えば、以下のような症例では、ワイヤー矯正が第一選択となることがあります。
- 顎の骨格に大きなズレがあり外科手術を伴う矯正が必要
- 歯ぐきの中に埋まっている歯(埋伏歯)を引っ張り出す必要
また、「自分でマウスピースの管理をする自信がない」という方にも、固定式のワイヤー矯正が向いていると言えるでしょう。
インビザラインで叢生治療を行う全ステップ解説
叢生治療のプロセス全体を把握することで、漠然とした不安は大きく軽減されます。
カウンセリングから保定期間まで、あなたのガタガタの歯並びが美しく整うまでの道のりを具体的に見ていきましょう。
1:初回カウンセリング
まず、あなたの「このガタガタの歯並びが本当に治るのか」という一番の不安や、理想のゴールについてじっくりお聞かせください。
お口の中を拝見し、あなたの叢生のレベルであればインビザラインでどこまで改善が見込めるか、抜歯の可能性はどのくらいか、といった具体的な見通しをお話しします。
2:叢生を0.1ミリ単位で3Dデータ化する精密検査
正確な治療計画を立てるため、レントゲン撮影やiTero(アイテロ)などの3D光学スキャナーで歯の重なり具合や顎の状態を精密にデータ化します。
これにより、なぜ叢生が起きているのか、歯を並べるためにどれくらいのスペースが必要なのかを客観的に分析します。
3:クリンチェックでガタガタの歯が整う未来を治療前に体験
ここが叢生治療におけるインビザラインのハイライトです。
精密検査のデータを基に、「クリンチェック」という専用ソフトで、ガタガタの歯が抜歯やIPRで生まれたスペースに一つずつ綺麗に収まっていく様子を3D動画でシミュレーションします。
治療を始める前に「本当にこの歯並びが治るんだ」と視覚的に実感できるため、安心して治療に臨むことができます。
4:治療スタート
専用のマウスピース(アライナー)をお渡しします。叢生治療では、歯を精密に動かすための「アタッチメント」の装着がほぼ必須です。
これにより、複雑にねじれた歯も効率的に回転させることができます。1日20~22時間装着し、指示通りに交換を進めていきます。
5:定期チェックと調整でスペース確保を確認
治療中は1~3ヶ月に一度ご来院いただき、計画通りにスペースが作られ、歯が動いているかを厳密にチェックします。特に叢生治療では歯の動きが複雑なため、この定期チェックが非常に重要です。
必要に応じてIPRを追加したり、計画を微調整(リファインメント)することもあります。
6:保定期間
計画通りに歯が並んだら治療完了です。しかし、叢生は歯が元のガタガタの位置に戻ろうとする「後戻り」の力が働きやすい傾向があります。
この後戻りを防ぎ、美しい歯並びを定着させるために、「リテーナー(保定装置)」を使用する非常に重要な期間に入ります。これを怠ると、せっかくの努力が水の泡になりかねません。
叢生治療の成否を分けるのは歯科の選び方
ここまでインビザラインの可能性についてお話してきましたが、最も重要なことをお伝えします。
それは、インビザラインはあくまで「道具」であり、特に叢生のような複雑な歯並びを治すには、その道具をどう使いこなすか、つまり術者である歯科医師の知識と技術、経験が治療結果を大きく左右するという事実です。
なぜ叢生治療では「どの医師に頼むか」が最も重要なのか
クリンチェックの3Dシミュレーションは、ソフトウェアが自動で作成した初期案に過ぎません。特に叢生治療の計画は、まさに医師の腕の見せ所です。
抜歯をするかしないか、どの歯を抜くか、IPRをどこに何ミリ入れるか、どの歯にどんな形のアタッチメントをつけるか。これら無数の選択肢から、あなたにとって最も安全で効率的な計画へと最適化するのが専門医の仕事です。
経験の浅い医師がソフトウェアの初期案のまま治療を進めると、歯が計画通りに動かないばかりか、出っ歯になったり、歯の根にダメージを与えたりするリスクさえあります 。
後悔しないために、ぜひ以下のポイントを参考にして、あなたの大切な歯を任せられる歯科医を見つけてください。
叢生、特に抜歯を伴う難症例のインビザライン経験は豊富か?
インビザライン社は年間の症例数に応じて歯科医師をランク付けしています。上位ランクの医師は、それだけ多くの複雑な症例(重度の叢生を含む)を扱ってきた証拠と言えます。
クリニックのウェブサイトなどで確認してみましょう。
芦屋M&S歯科・矯正クリニックは、インビザライン社より「プラチナステータス」に認定いただきました。医院全体としての症例数で表彰いただいています。
あなたと似た叢生の症例写真を見せてくれるか?
カウンセリングで「私と似たようなガタガタの歯並びの症例を見せてください」と頼んでみましょう。
特に、抜歯をしたケース、しなかったケースの両方を見せてもらえると、その医師の対応力の幅がわかります。
豊富な症例写真は、技術力と自信の表れです。
カウンセリングは丁寧で分かりやすいか?
なぜ抜歯が必要なのか(あるいは不要なのか)、IPRで歯を削るリスクはどの程度か、といった叢生治療特有の疑問に対して、専門用語を避け、あなたが完全に納得できるまで説明してくれるかどうかが重要です。
3Dスキャナーで簡単なシミュレーションを見せながら説明してくれる医師は信頼できるでしょう。
ワイヤー矯正にも対応しているか?
あなたの叢生が、骨格的な問題を含むなどインビザライン単独では難しい超重度のケースである可能性もゼロではありません。
その際に客観的にワイヤー矯正のメリット・デメリットも説明し、最適な選択肢を一緒に考えてくれる医師こそ、本当に信頼できるパートナーです。
まとめ
長年悩み続けてきたガタガタの歯並び。その悩みが、最新のインビザライン治療と信頼できる専門医との出会いによって、解決できる可能性は非常に高まっています。
あなたの理想の笑顔への旅は、まず現状を正しく知ることから始まります。まずは専門家によるカウンセリングを受け、あなたの歯並びの可能性について具体的な情報を得ることです。
当院の無料カウンセリングでは、最新の3Dスキャナーを用いて、その場であなたの歯並びがどのように美しく変わる可能性があるのかをシミュレーションでお見せすることができます。
まずはお気軽にご相談いただき、自信あふれる笑顔への第一歩を踏み出してみませんか。
よくある質問
叢生のインビザライン治療、総額でいくらくらいかかりますか?
歯並びの重症度によって大きく異なりますが、全体的な矯正の場合、総額で60万円~100万円程度が目安となります。部分的な矯正であれば、これより費用を抑えることも可能です。
カウンセリングの際には、調整料や保定装置の費用など、治療完了までにかかる全ての費用を含んだ総額を必ず確認しましょう。
治療期間はどれくらいかかりますか?
軽度の叢生であれば1年未満で終わることもありますが、中等度から重度の場合は、一般的に1年半~2年半程度が目安です。その後、歯並びを安定させるための保定期間が同程度必要になります。
治療期間を左右する最大の要因は、患者様ご自身がマウスピースの装着時間(1日20時間以上)をしっかりと守れるかどうかです。
「重度すぎてインビザラインは無理」と言われることはありますか?
可能性はゼロではありませんが、その「無理」の基準は医師の経験や技術力によって大きく異なります。最新の治療法を熟知した専門医のもとでは、「重度すぎて治療できない」ケースは年々減少しています。
他院で断られた方でも、セカンドオピニオンで治療可能と診断されることも珍しくありません。諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。
関西随一の実力派プラチナ認定医芦屋M&S歯科・矯正クリニックに歯並び矯正をお気軽にご相談ください。