歯列矯正Q&A

口呼吸の治し方完全ガイド!原因・セルフ改善・歯列矯正での改善まで歯科医が徹底解説

口呼吸の治し方 完全ガイド―原因・セルフ改善・歯列矯正での改善まで歯科医が徹底解説
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「夜中に喉が乾く」「朝起きると口の中がネバつく」「子どもが口を開けたまま寝ている」こんな経験はありませんか?

これらは実は口呼吸の兆候かもしれません。口呼吸の習慣化は虫歯や歯周病のリスク増加だけでなく、睡眠障害や全身健康への悪影響、さらには子どもの顔貌形成まで深刻な問題を引き起こします。

この記事では、「芦屋M&S歯科・矯正クリニック」の歯科医立場から口呼吸の原因と影響を徹底解説し、自宅でできるセルフケアから専門的な矯正治療まで、あなたに最適な鼻呼吸回復法をご紹介します。

芦屋M&S歯科・矯正クリニック理事長 松岡伸輔

芦屋M&S歯科・矯正クリニック理事長の松岡です。

芦屋M&S歯科・矯正クリニックは2003年に兵庫県芦屋市で開院しました。医師全員がインビザライン治療(マウスピース治療)・小児矯正・咬合誘導で秀でています

インビザライン治療では1年間の症例数実績によって表彰される「プラチナステータス」に公式認定されています。

このブログで、インビザラインを始めとするマウスピース矯正、ワイヤー矯正など歯並びに関するさまざまな疑問にお答えします。もし、このブログで分かりにくい点がありましたら、お気軽にお問合せください。

口呼吸とは?鼻呼吸との違い

口呼吸とは?鼻呼吸との違い

人間の呼吸器官は本来、鼻呼吸を基本として設計されています。

この見出しでは、口と鼻それぞれの呼吸経路の違いと、口呼吸が習慣化するメカニズム、さらに自分が口呼吸タイプかどうかを簡単に判断できるセルフチェック法を解説します。

なぜ人は鼻呼吸が基本設計なのか

鼻呼吸こそが人体にとって最適な呼吸方法です。鼻腔を通過する際、私たちの吸い込む空気は鼻毛や粘膜によって、以下のように調整されます。

  • 微細なホコリや細菌が取り除かれる
  • 体温に近い温度まで温められる
  • 適切な湿度に調整される

口から直接空気を取り込むと、この天然のフィルター機能を通さなくなってしまうため、乾燥した冷たい空気が喉や肺に直接流れ込み様々な問題を引き起こします。

つまり、鼻は私たちの体に備わった天然の空気清浄機兼加湿器なのです。

3秒セルフチェック―あなたは口呼吸タイプ?

今すぐ鏡の前に立って、簡単な3秒セルフチェックをしてみましょう。

  1. リラックスした状態で自然に立ち、正面を向いてください。この時点であなたの唇は自然に閉じていますか?
  2. 鏡に向かって自然な笑顔を作ってみてください。口を閉じたまま笑うことができますか?
  3. 小さな鏡や清潔なスマホ画面を鼻の下に当て、「ふーっ」と息を吐いてみてください。鏡やスマホ画面に均等に明確に曇りが生じますか?

このチェックで、2項目以上「いいえ」になる場合は、口呼吸の習慣化が疑われます。

口呼吸を引き起こす原因

口呼吸を引き起こす原因

口呼吸の背景には様々な要因が潜んでいます。根本的な改善のためには、これらの原因を正しく理解することが不可欠です。

鼻づまり・鼻炎など鼻腔トラブル

環境省の2022年の調査によると、日本の花粉症人口は実に人口の4割を超え、10年ごとに約10%ずつ増加傾向にあるとされています。これほど多くの方が鼻腔トラブルを抱えていることが、口呼吸人口増加の大きな要因となっています。

鼻づまりが慢性化すると、生理的に口呼吸に頼らざるを得なくなります。特に就寝中の鼻閉は質の高い睡眠を妨げ、知らず知らずのうちに口呼吸が習慣化していきます。

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症などは、耳鼻咽喉科での適切な治療が口呼吸改善の第一歩となるケースが少なくありません。

例えば、一日中鼻づまりが続く、片側だけが常に詰まる、膿性の鼻水が出るといった症状がある場合は、まず耳鼻科での精査が必要です。

姿勢・舌位が誘発するケース

デスクワークやスマホ使用時の姿勢を思い浮かべてみてください。頭が前に出て、背中が丸まった状態では、自然と顎が下がり気味になります。

この姿勢が続くと、舌は本来あるべき位置(上顎の前方部分に軽く接触した状態)から下方へずれ落ち、舌位の低下を招きます。

舌位が低下すると、口腔内の空間バランスが崩れ、上下の唇を自然に閉じておくことが難しくなります。

特に集中している時、無意識に口が開いていることに気づかないまま数時間が過ぎてしまうことも少なくありません。

マスク習慣が誘発するケース

コロナ禍以降のマスク常用も口呼吸を促進する新たな要因となっています。マスク着用時は自分の呼吸方法を意識しづらく、口呼吸をしていても気づきにくいのです。

マスクの中で無意識に口を開けたまま過ごす時間が増えることで、口呼吸のパターンが脳に刷り込まれていきます。

歯並び・顎形態が関与するケース

口呼吸と歯列・顎の形態は密接に関連しています。

例えば、上の前歯が前に突出した「上顎前突(いわゆる出っ歯)」の場合、上下の唇が自然に閉じにくい状態にあります。上下の歯が咬み合わない「開咬(オープンバイト)」は前歯部分に隙間ができ、そこから息が漏れやすくなります。

これらの不正咬合は単なる「見た目の問題」ではなく、歯並びや顎の形態が原因で物理的に口唇閉鎖が困難になります。そして、自然と口呼吸に頼らざるを得ない状況が生まれるのです。

このような骨格的な要因がある場合、セルフケアだけでは改善が難しく、矯正歯科での専門的なアプローチが必要になることがあります。顎の発達段階にある小児期であれば、早期の介入で顎の成長誘導も可能です。

放置できない!口呼吸が招くリスク

放置できない!口呼吸が招くリスク

口呼吸は単なる呼吸方法の違いではなく、口腔内環境の悪化から全身の健康問題、さらには子どもの発育にまで影響を及ぼす可能性があります。

虫歯・歯周病リスクの増大

口呼吸が続くと唾液の分泌量が減少し、口腔内が乾燥(ドライマウス)します。

健康な口腔内のpH値は約6.8~7.0の中性、またはわずかなアルカリ性です。しかし、口呼吸により唾液が減るとpH値が低下します。つまり、酸性に傾きます。

口腔内のpH値が「脱灰臨界点」(pH5.5)を下回ると、歯のエナメル質からミネラルがどんどん溶け出し虫歯リスクが急激に高まってしまいます。

また、口腔内の乾燥は歯周病の原因菌の増殖も促進します。唾液に含まれる抗菌成分が減少することで歯垢中の細菌が増殖しやすくなるためです。

睡眠障害と全身健康への影響

夜間の口呼吸は睡眠の質を著しく低下させます。口から呼吸すると気道が狭くなりやすく、酸素供給が不安定になります。

脳が酸素不足を感知すると、深い睡眠から浅い睡眠へと引き戻されます。この断片的な睡眠パターンは交感神経を過度に活性化させ、血圧上昇や心拍数増加を引き起こします。

口呼吸は単なる呼吸の問題ではなく、全身の健康状態に影響を及ぼす重要な因子なのです。

子どもの顔貌・歯列発育への長期的弊害

子どもの成長期における口呼吸は、顔の発達に大きな影響を与えます。口呼吸が長期間続くと、特徴的なアデノイド顔貌と呼ばれる顔つきになることがあります。

アデノイド顔貌は鼻筋が低く、顔が縦に長く、口が常に少し開いた状態で表情が乏しくなる特徴があります。

口呼吸の子どもは舌の位置が低く、上顎の発達を促す自然な圧力が不足します。その結果、上顎が狭く、高口蓋(口の中の天井が高い状態)となり、歯並びの不正を招きやすくなります。

このような顎骨の発育への影響は、成長期を過ぎると元に戻すことが困難です。早期発見・早期改善が何より重要です。

今日から始める口呼吸自力改善プログラム

今日から始める口呼吸自力改善プログラム

口呼吸の改善は専門医の助けを借りる前に、自宅でできるセルフケアから始めることができます。

環境調整や簡単な筋トレーニング、就寝時のサポート方法など、すぐに実践できる方法をご紹介します。

加湿器で部屋の環境改善

鼻呼吸を習慣化するためには、まず鼻の通りを良くする環境づくりが重要です。加湿器などで室内の湿度を40〜60%に保つことで、鼻粘膜の健康を維持できます。

乾燥した鼻粘膜は微細な傷がつきやすく、バリア機能が低下するため、アレルゲンや細菌の侵入を許しやすくなります。だからこそ、特に冬場や乾燥する季節には加湿器の使用が効果的です。

鼻うがい

鼻うがいも効果的な方法です。生理食塩水(水500mlに対して食塩小さじ半分)を使用した鼻うがいの手順は以下の通りです:

  1. 洗面台の前で前かがみになり、顔を横に向けます
  2. 専用の容器か小さいカップに生理食塩水を入れます
  3. 上側の鼻腔に容器の先端を当て、優しく生理食塩水を注入します
  4. 自然と反対側の鼻から液体が流れ出てきます
  5. 反対側も同様に行います

また、血行を促進する温湿布も鼻づまりの緩和に役立ちます。清潔なタオルをぬるま湯で濡らし、軽く絞ってから鼻の周りに2〜3分当てるだけでも鼻腔の血流が改善し、通気性が向上します。

舌・口唇筋を鍛える「あいうべ体操」完全解説

「あいうべ体操」は、口周りの筋肉を効果的に鍛え、口呼吸の改善に役立つシンプルながら効果的なエクササイズです。名前の通り、「あ・い・う・べ」の4つの動作で構成されています。

  • 「あ」:口を大きく開きます。「あー」と言うときのように、顎を思い切り下げましょう。
  • 「い」:口角を横に引き、大きく「いー」と笑顔を作ります。
  • 「う」:唇を前に突き出し、「うー」の形を作ります。
  • 「べ」:舌を思い切り前に出し、顎を下げながら「べー」とします。

この一連の動作を「あー、いー、うー、べー」とリズミカルに行います。1セット30回を目安に、朝と晩の2回実践することをおすすめします。

継続することで、舌の位置が徐々に上がり、口唇の閉鎖力も向上していきます。

正しい寝姿勢

就寝中の口呼吸を防ぐためには、寝姿勢も重要です。仰向けで寝る際は高すぎない枕を使用し、頭が前傾しすぎないよう注意しましょう。

必要に応じて、タオルを丸めて作った小さな枕を首の後ろに置くと気道が確保しやすくなります。横向き寝の場合も、顎が引けた姿勢を維持できるよう枕の高さを調整することが大切です。

歯科医院でできる口呼吸改善の専門的アプローチ

歯科医院でできる口呼吸改善の専門的アプローチ

セルフケアだけでは改善が難しい場合や、より確実に口呼吸を改善したい場合は、歯科医院での専門的なアプローチが効果的です。

特に歯列や顎の形態に問題がある場合は、歯列矯正(ワイヤー矯正やマウスピース矯正など)や口腔筋機能療法などの治療が根本的な解決につながります。

歯列矯正が口呼吸改善につながる理由

歯列矯正は、美しい歯並びを実現する治療として知られていますが、実は口呼吸の改善にも大きく貢献する可能性があります。

その理由は、単に歯並びを整えるだけでなく、適切な舌位の獲得と気道空間の拡大につながるからです。

精密な検査診断(例:3Dスキャン技術を用いた診断など)では、口呼吸の患者様に上顎の狭窄(きょうさく)や高口蓋が見られることが少なくありません。

歯列矯正(ワイヤー矯正やマウスピース矯正)によって上顎を適切に拡大することで、鼻腔の底部分の幅も広がり、気道の容積増大につながる可能性があります。

また、歯並びが整うことで、舌が正しい位置(上顎の前歯の少し後ろのスポットと呼ばれる位置)に収まりやすくなり、その状態を維持しやすくなります。

歯列矯正治療を通じて歯並びや顎のバランスが整うことで、舌の正しい位置感覚が徐々に身につき、舌位が改善していくことが期待されます。

口腔筋機能療法(MFT)とのシナジーで根本解決

口腔筋機能療法(MFT: Myofunctional Therapy)は、「筋トレーニング」と「呼吸リハビリテーション」のハイブリッドとも言える治療法です。

口腔周囲の筋肉、特に舌、唇、頬の筋肉のバランスを整え、正しい機能を獲得するためのトレーニングプログラムです。

歯列矯正(ワイヤー矯正やマウスピース矯正)とMFTを併用することで、歯列の改善と同時に口腔周囲筋の機能も向上させることができ、治療効果の相乗効果(シナジー)が生まれます。

矯正治療だけでは改善しにくい「舌の癖」や「口唇の閉鎖不全」も、MFTにより効果的にアプローチできる場合があります。

MFTでは、専門の歯科医師や歯科衛生士の指導のもと、舌の位置付け訓練、口唇の筋力強化、正しい嚥下パターンの習得など一人ひとりの症状に合わせたプログラムが提供されます。

他科連携(耳鼻科・睡眠外来)で再発を防ぐ

口呼吸の完全な改善と再発防止のためには、歯科だけでなく他科との連携も重要です。特に鼻腔の問題が根底にある場合は、耳鼻咽喉科との連携治療が効果的です。

例えば、慢性的な鼻づまりの原因が鼻中隔湾曲(鼻の仕切りの曲がり)にある場合、鼻中隔矯正術を行うことで鼻呼吸の通気性が大幅に改善します。

また、アレルギー性鼻炎に対しては、最新の免疫療法やステロイド点鼻薬による継続的な治療が、口呼吸への逆戻りを防ぐ重要な役割を果たします。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる場合は、睡眠外来との連携も有効です。

重度のSASに対しては、持続陽圧呼吸療法(CPAP)が第一選択となりますが、軽度〜中等度の場合は、歯科で作製する睡眠時無呼吸症候群治療用マウスピース(スリープスプリント)との併用療法が効果的です。

まとめ

口呼吸は見過ごされがちですが、実は全身の健康に大きく影響する重要な問題です。鼻は私たちの体に備わった天然の空気清浄機であり、鼻呼吸こそが本来の呼吸方法です。

まずは、あいうべ体操や環境調整などのセルフケアに取り組みましょう。そして、6人の歯科医が在籍する総合歯科医院「芦屋M&S歯科・矯正クリニック」での歯ならび矯正や口腔筋機能療法などの専門的治療も検討してください。

正しい鼻呼吸を取り戻すことは、お口の健康だけでなく、全身の健康と生活の質向上への大切な一歩となります。

よくある質問

子どもの口呼吸は自然に治りますか?

子どもの口呼吸は自然治癒を期待せず、早期介入が重要です。成長期の口呼吸は顎の発達や歯列形成に長期的な影響を与えるため、放置すべきではありません。

子どもの口呼吸の主な原因:

  • アデノイド肥大や慢性的な鼻炎による鼻閉
  • 舌の位置や機能の問題
  • 口呼吸の習慣化による神経筋パターンの定着

対応策:

  • 耳鼻科での鼻腔トラブルの評価と治療
  • 発達段階に適した「あいうべ体操」の継続
  • 必要に応じた早期矯正治療の検討
  • 特に7〜12歳の成長期は顎の発育の重要な時期であり、この時期に適切な介入ができるかどうかが将来の顔貌や歯列に大きく影響します

歯列矯正で口呼吸は完全に治りますか?

歯列矯正は口呼吸改善に効果が出る可能性がありますが、単独で「完全治癒」を保証するものではありません。最大の効果を得るためには複合的なアプローチが重要です。

マウスピース矯正の口呼吸への効果:

  • 狭窄した上顎の拡大による鼻腔通気性の向上
  • 正しい舌位の獲得サポート
  • 適切な口唇閉鎖のための歯列形態の改善

しかし、最大の効果を得るためには、口腔筋機能療法(MFT)との併用や日常的な舌位・姿勢トレーニングの継続、そして原因となる鼻腔トラブルの解決が欠かせません。

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